ニューヨークの若者の間で、タバコが流行り出している。今回は、そんなThe New York Timesの記事を紹介したいと思います。現に米国では、過去30年間一貫してタバコの販売量が減り続けていましたが、2020年に増加に転じたそうです。なぜなのか?そのヒントが、記事の中でインタビューされている若いニューヨーカーたちの声から見え隠れします。
ここ1~2年で多くの友達がタバコを吸いだした。でも、中毒性はなくて、ただタバコを吸う行為を楽しんでいるんだ
タバコを吸う行為は、自分にとって、セクシーで優雅な80年代のライフスタイルのリバイバル
多くの友人たちはスタイリッシュにタバコを吸っている姿をインスタグラムなどのソーシャルメディアに投稿してるよ
直接的な理由は、新型コロナ感染のストレスからの解放、そして、人とのソーシャルな関係が希薄化したことへの反動
レストランやバーで、友達とお互いに目配せをして、一緒に外にタバコを吸いに行く瞬間が最高に楽しいんだ
自分が喘息持ちでタバコが悪いことは百も承知だけど、ウェルネス文化への抵抗って感じが堪らない
マリファナは今や多くの州で合法化されて、薬みたいになっている。タバコが、僕たちの抵抗の象徴に戻ったんだ
電子タバコは、USB充電器を口にしているようでダサい。ニコチン中毒者がタバコの代わりに使っているものでしょ
さて、皆さんは、どのように感じたでしょうか?コロナが消費者の言動に影響を与えているのは確かですが、タバコが今さら復活する訳がないと思いつつも、ニューヨーカーの声々に、実は共感できた部分も多かったのではないでしょうか?
この論理やサイエンスでは説明できないが、なぜか「共感できる」部分こそが、とても重要です。企業が商品のコンセプト作りから実際の商品開発、さらにはマーケティングを進めていく際に、こうした共感が見えているか/見えていないかで、大きな差が出てくるはずです。
それでは、どうすれば「共感できる」ものを探し出していくことができるのでしょうか?もちろん、虚心坦懐に消費者の声を聞く、というのが当然の答えですが、なんら仮説もなく十人十色の消費者の声を聞いても、そこからストーリーを作りだしていくことは難しいのが現実です。
そうした仮説作りを進める際のヒントとして、私たちが気をつけていることを含めて、EISの考察は以下のとおりです。
以下、EISの考察です
- 人間や社会は、究極的にはバランスを求めるもの
- 例えば、社会において都市化が極度に進めば、田舎や自然を求める力が強くなる
- 健康や環境に良いモノが溢れれば、その反動でRebelな商品へのニーズが生まれる
- 人間や社会がバランスを取るための対立軸や物差しを見つけることが重要
- タバコの例では、健康 ⇔ 社交、従順 ⇔ 反逆、倫理的 ⇔ 快楽的、物理的な幸せ ⇔ 精神的な幸せ 等々
- タバコの例では、健康 ⇔ 社交、従順 ⇔ 反逆、倫理的 ⇔ 快楽的、物理的な幸せ ⇔ 精神的な幸せ 等々
- 人間の欲求や欲望は、社会で表層に見える綺麗ごとばかりではない
- SDGsや地球環境など規範的・禁欲的な価値観が強まる社会において、必要悪や人様に言えない秘密の楽しみのような「影」へのセンサーを磨くことが必要