弊社共同代表の方 健太郎がNewsPicksのプロピッカーに就任!独自の視点でコメントを日々投稿しています→ フォローする

箱根駅伝が1000億円稼ぐ未来はくるのか、日米間カレッジスポーツの違い

アメリカ版バスケの甲子園、March Madnessが先週決勝戦を迎え、カンザス大学の優勝で幕を閉じました。全米での盛り上がりから、つい日本の甲子園と言ってしまいましたが、実際は高校ではなく大学同士がトーナメントで競い合う大会です。アメリカの放送局CBSが支払ったMarch Madnessの放映権料は約8.5億ドル(1000億円)と言われており、スポーツ専門の動画配信サービスDAZNがJリーグへ支払った額の約180億円(12年間で約2200億円の契約)と比較すると、March Madnessの人気は一目瞭然です。

プロスポーツと比べ出場数の多さや番狂わせの展開、そしてアメリカ独特の強い母校愛が人気を支えているのでしょう。アメリカでは卒業してから何十年経っても、試合日には同窓生と一緒にスポーツバーへ足を運んだり、母校のスタジアムに行ってテールゲートパーティー(トラックやバンの荷台を使ったBBQ)を開いたり、派手な応援方法で試合を盛り上げたり、とカレッジスポーツはアメリカ市民にとって大切な娯楽の一つです。

University of Wisconsinのテールゲートパーティーの様子。駐車場以外でも、スタジアムの近くでゲーム開始前に行われる屋外パーティーもある
2021/10/23 UCLA vs University of Oregon アメフトの試合の様子。マーチングバンドが試合を盛り上げている
目次

アメリカのカレッジスポーツを牽引するNCAA

March Madnessを開催するのは、NCAA(全米大学体育協会)です。全米50州、コロンビア特別区、プエルトリコに位置する様々な規模の学校が1200校ほど加盟しており、バスケやアメフトといった24の競技種目をも包括しています。スポーツビジネス大国のアメリカなだけあり、2021年にはNCAAだけで約11.5億ドル(1400億円)の収入を記録。奨学金などの形で加盟校へ還元される仕組みです。  

March MadnessもNCAA(全米大学体育協会)が主催している

日本版NCAAとも称された、UNIVASとは

NCAAのような組織を日本でも作り、カレッジスポーツの振興を目指そうと2019年に設立されたのが、UNIVAS(一般社団法人 大学スポーツ協会)です。現在、219校の大学と32の競技団体が加盟しています。2020年度の決算報告によるとUNIVASの収入は約9億円でNCAAの1%にも満たない額です。日本ではなかなかカレッジスポーツのビジネス化が進んでおらず、UNIVASの加盟校数がNCAAの20%程と少ないことを考慮しても、アメリカとの歴然な差は否めません。

2019年より競技横断型大学対抗戦「UNIVAS CUP」を開催
「UNIVAS CUP」総合ランキング発表の様子

NCAAとUNIVASの違い

何がここまで日米間のカレッジスポーツの違いを生んでいるのでしょうか。NCAAとUNIVASの違いを読み解くことで、背景が見えてきます。さらに、日本におけるカレッジスポーツの振興にはこれらを解決する必要があるようです。

1. 大会の運営体制

NCAAは各競技の大会も全て一元的に管理しています。そして、冒頭取り上げたMarch Madness等メジャーなスポーツで得た収入をマイナーなスポーツへ分配することができます。さらに、一元的に管理することで、学生アスリートのサポートや大会への集客方法といったカレッジスポーツにおけるノウハウも共有されることになり、カレッジスポーツ全体が巨大なビジネス市場と化すことができるのです。

一方、日本を見てみると、カレッジスポーツの代名詞、箱根駅伝・六大学野球等は、UNIVASではなく各競技団体が開催しているため、UNIVASの収入には繋がりません。つまり、競技ごとに経済力やノウハウが偏り、カレッジスポーツ全体でのビジネス形成は程遠い現状です。

2. 加盟校

全米で約4000校、日本では約800校の大学があると言われ、アメリカ・日本のどちらもその内30%程がNCAA、UNIVASに加盟しており、割合的には問題がないでしょう。しかし、問題なのは加盟校の顔ぶれです。アメリカでは有名な競技大会はNCAAが管理しており、加盟校でないと出場できません。そのため、強豪校はほぼ全てNCAAに加盟しています。一方、日本では六大学野球で有名な慶應や明治はUNIVASに加盟していません。

3. 活動期間

NCAAではシーズン制を採用しています。1年間の内、各スポーツの活動ができる期間が決められており、その期間(シーズン)以外の活動は原則禁止されています。例えばMarch Madnessの選手たちを例にとってみると、11月頃から3月にかけてチーム練習や試合に打ち込み、それ以外は勉学に励んでいます。日本では1年間を通してほぼ毎日チーム練習があるので、カレッジスポーツへの参加のハードルが高いと言えるでしょう。

以下、EISの考察です

  • カレッジスポーツの人気とともに、学生アスリートも脚光を浴びているアメリカでは、彼らとスポンサーとなるローカルビジネスを繋ぐマッチングプラットフォームも登場。カレッジスポーツの更なるビジネス化が予見される
  • 一方、日本のカレッジスポーツ界では「ビジネス=悪」の固定概念が蔓延っている。学生アスリートのために必要な原資を集める、という概念を広めることがカレッジスポーツの振興を目指すためのファーストステップである
  • 現状、劣悪な環境の中でも頑張って日々練習して強くなりました、という日本の美徳を全面に出すコンテンツが多い。もちろん、感情に訴えかける手法も捨て難いが、そうした結果、「ビジネス=悪」という概念が植えつけられていることも念頭に置いておきたい
  • NCAAはメジャースポーツで得た収入をマイナースポーツへ回す、といった再配分を行っている。この結果、マイナースポーツも存続し続けることができ、スポーツの多様性を維持できる
  • 日本では偏差値主義が広がっており、偏差値が高い大学ではないと人前で誇れない、という心理的背景もある。大学受験の構造を変えることは難しいが、学内イベントや授業カリキュラムなど、他大学との差別化は各大学でも実行可能。それらを通して、母校愛が育まれることを願う

最新記事を週1回メールでお届けします。
EIS Insightの無料メルマガに登録しませんか?

登 録

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてください!

気に入った記事をシェア!
  • URLをコピーしました!
目次