先週、英国のガソリンスタンド大手であるEGグループが、ロンドン郊外を中心にヘルシー志向のファストフードを展開するLEONを買収したというニュースが飛び込んできました。LEONは、ビーガン・バーガーやグルテンフリー・チキンナゲット、はたまたカーボンニュートラル・バーガーなど、環境志向・健康トレンドの先端を行くトレンディ―なバーガーショップだけに、今回ガソリンスタンドに買収されたと聞いて違和感を覚えた方も多いでしょう。
EG(Euro Garages)のサクセスストーリーは、2001年にインド系英国人であるIssa兄弟が、マンチェスター郊外の一つのガソリンスタンドを15万ポンド(約2000万円)で買収・運営したところから始まります。ファンドの投資を受け入れて英国のみならず欧州でEssoなどの大手ブランドのガソリンスタンドを次々に買収し、今では年商3兆円、従業員数は4万4千人を超える規模に急成長しました。
成長産業というよりは、衰退・統廃合が進むガソリンスタンド業界で彗星のごとく急成長を遂げた要因はどこにあるのでしょうか?ファンドの資金を活用した大胆な買収(ほぼバルクセール)も当然、その大きな要因の一つですが、Issa兄弟の先見性はガソリンスタンドの買収を進めるのと並行して、コンビニ、KFCなどのファストフード、そしてAsdaといったスーパーの買収を次々と行い、ガソリンスタンドとのシナジー効果を創出していったことにあります。ガソリンスタンドをガソリンの補給地から食糧調達、はたまた買い物拠点として活用していったのです。
2020年になってコロナ禍でファストフードを含む外食業界が苦戦を始めるとさらに買収を加速化し、今では英国・アイルランド内で最大のKFCフランチャイズに、そしてグループの粗利の5割はフード関連事業が弾きだしているのです。
以下、EISの考察です
- 成熟・衰退産業の大転換は、既存業界の枠を超えた大胆な発想を持った新規参入者によって、一気に起こる。
- 「ガソリンスタンドが何故ビーガンバーガーを?!」と驚く時点で、すでに固定概念に捉われている。
- 彼らは、不況や停滞期にここぞとばかり値下がりしたアセットを買い漁り、オセロの大逆転のようにバリューアップに動く。
- 世界的にEV化が進行し、ガソリンスタンド業界はますます苦境に立たされるとの見方が大きい中、Issa兄弟の戦略が注目される。
参考文献