米国のマクドナルドがブランドキャラクターであるGrimaceの誕生日に焦点を当てたキャンペーンを開始。キャラクターに因んだ紫色のシェイクやミールセットを販売。今回はこのメニューではなく、プロモーションコンテンツに注目したいと思います。
新しい30秒のCMでは、前半が1980/90年代のノスタルジックなテイストで、後半は現代をイメージさせるストーリーになっています。
具体的には、前半はデコレーションを施した店内でバースデーパーティを開き、チェキでその様子を撮影。後半はドライブスルーの最中にスマホで写真を撮ったり、私たちがよく目にする現代のマクドナルド店内でバースデーパーティを開く様子が映し出されています。
マクドナルドはこのキャンペーンを通して、「今日のマクドナルドでもバースデーパーティが開けるよ!」とアピールしているのです。
30年前の子供たちにとって、マクドナルドでのバースデーパーティは特別な体験
1980年代、マクドナルドは店内での誕生日パーティーサービスを導入。このパーティー体験では、予約が入ると事前にスタッフが店内をバルーンなどでデコレーション。ゲストが到着すると従業員が出迎えてくれ、ミニゲームを楽しんだり、遊具が設置された店内のPlaylandで遊び尽くします。
その後、ハッピーセットとバースデーケーキが用意され、パーティーが終わると、子どもたちはそれぞれおもちゃや塗り絵などお土産をもらって帰るのが、当時の子供達にとっては最高なバースデーでした。
ファーストフードは利便性を追及する時代へ
そんなマクドナルドでのバースデーパーティを、今日の子供たちは知っているのでしょうか?残念ながら、そのような姿を見ることはできません。
実際に1980/90年代に幼少期を過ごした世代からはこんな声があがっています。
「マクドナルドの誕生日会は驚くほど特別なことでした。昔はマクドナルドのキャラクターが店内のいたるところにいたのに、今ではハッピーセット以外に子供との接点はありません。マクドナルドは料理をしたくないときに行く場所になってしまいました」
マクドナルドはもちろん、現在のファーストフードは食糧を得るだけの存在に。実際に、ドライブスルーの拡大やダイニングエリアの縮小が進み、注文もマシーンで完結してしまいます。
利便性とは真逆をいくバースデーパーティが世界中で復活!?
利便性を追及したファストフード業界ですが、その影響で体験型ダイニングの需要が高まることも予想されます。体験型ダイニングとはまさに昔のマクドナルドでのバースデーパーティーのことです。冒頭のキャンペーンはもちろん、オーストラリアでもコロナによって中止していたバースデーパーティーを再開する方針であることを発表。UAEのマクドナルドも2023年5月に再開しています。
以下、EISの考察です
- ウィズコロナ時代に物理的な接触が減少したことにより、アフターコロナ時代にはリアルな体験や交流の需要が高まり、利便性に加え経験価値が重要視される。
- レコード、フィルムカメラ、文房具などアナログ回帰が近年続いており、これらも消費者が経験価値を求めた結果と言える。
- 利便性の観点で比較するとファーストフード業界はどこも横並び。他の軸で競争性を高める必要があり、マクドナルドは今回バースデーパーティーというコンテンツで経験価値の向上を目指している。