Fordが投資していた自動運転開発スタートアップArgo AIが閉鎖することになりました。
Argo AIはGoogleの自動運転技術に携わっていたBryan Salesky氏らにより2016年に創業しました。これまでFord、Volkswagen、ライドシェア大手Lyftらから36億ドル(5,300億円)の資金調達をしています。Argo AIの目標はレベル4に該当する自律走行運転車の2021年の市場投入でしたが達成できず、追加の資金調達が困難なため閉鎖することになりました。Fordは実用化されているレベル2(運転支援)やレベル3(条件付き自動運転)の機能拡充を進める方針に変換し、Argo AIの一部の従業員を雇用する予定です。レベル4の技術は自社で作る必要はないと声明しています。
類似事例として、Argo AIの競合企業であるAurora Innovationは資金確保の為の一時解雇やApple・Microsoftへの身売りを検討しています。これらの動きは、米国市場の景気後退期とも関係しており、将来得られる可能性のある果実よりも現実を見据える企業が出てきたことを意味しています。事実として、2022年に入り米国のスタートアップのレイオフが急激に増加しています。
その一方で、リーディングカンパニーは順調に事業を拡大しています。Teslaは2022年第三四半期に、昨年同期比42%増となる343,000台の記録的な売上を記録し、GM傘下のCruiseは商業用ロボットタクシーをカリフォルニア全域に広げ、Google傘下のWaymoはカリフォルニア州で完全無人運転サービスを実現する予定です。
目次
以下、EISの考察です
- 自動運転技術はイメージによる先行投資が終了し、TeslaやCruise、Waymoのように技術優位性をもち差別化を追求し続ける企業と、FordやVolkswagenのように実用的な技術を利用する企業に分かれていく
- 後者は米国のリセッションや投資家からの圧力などの影響を受け、短期に実現できる実用化された技術の機能拡張や効率性が目標となる。そのため、共通化・汎用化がしやすい技術・イノベーションを保有する企業との連携・協業・買収が活発になると予想される
- 日本においては、完全自動運転の差別化ができにくくなる状況と、他国よりも法・規制面のハードルが高い状況を逆に利用し、限定された道路・利用者・車両における自動運転の実証を進めていけるのではないか