過去記事でも取り上げたOpenAIですが、今度は音声から文字を生成する、文字起こしオープンソースAI「Whisper」を発表しました。ウェブから収集した68万時間に及ぶ音声データを用いてAIモデルを学習させ、アクセント、背景・雑音、専門用語に対する精度が向上していることを謳っています。
英語だけでなく、日本語やフランス語、ドイツ語など数十以上の言語にも対応しています。文字起こしの精度は言語ごとに異なり、日本語の単語誤り率は6.4%でWhisper対応言語の中でもかなり高い精度で対応しています。
現在の対象ユーザーはAI研究者で、彼らに無償で利用してもらい、フィードバックを受けることにより品質や機能性の向上を図ります。ゆくゆくは文章生成モデルGPT-3や画像生成モデルDall-e2のように、一般ユーザーでも利用できる商用化を目指していくものと見られます。
OpenAIは、Tesla CEOのイーロン・マスクと有名なベンチャーキャピタルY Combinatorの元社長であるサム・アルトマンらにより2015年に設立した団体です。当初は非営利団体を設立し、2019年に営利企業OpenAI LPを創立して、現在は営利・非営利のハイブリッド体制で運営されています。マイクロソフトからも出資を受け、資金調達額は$1B(1,500億円)に達しています。
OpenAIのビジネスモデルは、GAFA等の超大手IT企業の中核をなすAI技術をオープンソースで提供することにより、全世界の優秀な研究者・エンジニア・スタートアップがOpenAIのオープンソースを用いた多種多様のサービスを作ることより価値を高め、その価値を元にして政府・企業・ベンチャーキャピタルから資金を調達するものです。前述したGPT-3を利用したアプリケーションは発表から9ヶ月で300以上リリースされ、世界中に数万人の開発者がいる強力なコミュニティになっています。
以下、EISの考察です
- オープンソースモデルは、これまで資金的・人材的に大企業でしか成立しなかった技術を誰でも使えるようにするものである。これにより、資金力が無いスタートアップや個人の研究者・エンジニアでも最新技術を用いた新しいサービスを作ることが可能になり、一企業を超えた研究者・エンジニアのネットワークを作ることができる
- Linux財団やMozilla財団のように、政府や大企業の寄附で運営し、更に一部商用化することで価値を高めている
- 人材調達も有効で、オープンソースを利用できる研究者・エンジニアはスキルレベル・コミュニケーション能力が高く、何より当該製品を利用・習熟しているので適切な人材になる
- 日本は未だ人材・技術の囲い込みが主流で、企業・団体の枠を超えた活動は一部にとどまっているが、今後オープンソースモデルは有力なビジネスモデルになり得る