コロナの規制が緩和され、日本でも外国人観光客を目にする機会が非常に増えたのではないでしょうか。ウェルネスツーリズムや医療ツーリズムなどに代表される「〇〇ツーリズム」という言葉。観光以外の目的を兼ねた旅行を指しますが、最近アメリカでは新たな〇〇ツーリズムが台頭、それも「Tattourism」タトゥーとツーリズムを掛け合わせた造語です。
タトゥーが旅の最大の目的にもなり、旅のお土産ともなる
日本ではネガティブな印象を持たれやすいですが、海外ではあくまでタトゥーは自己表現として捉えられるようになっています。例えば、自分の性格や文化/宗教、そして自分と大切な人との繋がりを表現するために用いられるようです。
そんなタトゥーですが、Pew Research Centerの最新のリサーチによると、現在米国の32%が少なくとも1つのタトゥーを入れているようです。若い世代ほど割合も高くなり、タトゥーを入れている割合を世代別に見ると、ミレニアル世代(18~29歳)が58%に対し、X世代が(30~49歳)が38%、ベビーブーマー世代(50~64歳)が22%。
自己表現の一種であるタトゥーですが、旅行中の自己表現や旅に来た証として入れることも人気になっています。
実際にWall Street Journalのインタビューを受けたグリックマン氏は、タイのチェンマイへの旅行中、旅先と自分の繋がりを残せるように、仏教の僧侶から背中に手彫りのタトゥーを入れてもらった。タトゥーによって旅先と自分の中で絆を感じられた、とインタビューには答えています。
さらにタトゥーが旅行の最大の目的になっているパターンも。観光地とはお世辞にも言えないアリゾナ州のMesaですが、Instagramで16万人超がフォローする有名なタトゥーアーティストがいるために、オランダやカナダなど他国から訪れる人もいるという。
タトゥー関連スタートアップへの投資も盛り上がりを見せるタトゥービジネス
ロサンゼルスを拠点とするMad Rabbitは、タトゥーのアフターケアに焦点を当てたスキンケア製品を展開。独自の鎮静ジェルでタトゥーを入れた直後の痛みを軽減、かつ鮮やかな色を長持ちさせるような効果も。タトゥー業界の急成長が見込まれる中、2023年3月にはあの著名投資家Mark Cuban氏も参加し、シリーズAで100万ドルを調達。
2023年1月には、ロレアルパリがタトゥーデバイスメーカーのPrinker Koreaに投資。同社は化粧品素材を使ったインクでカラフルなタトゥーを肌に施すことができる。このタトゥーは石鹸で簡単に落とせるかつ痛みもなくデザインできることもあり、気軽にタトゥーを楽しめるデバイスとして今年のCESでも話題となった。
以下、EISの考察です
- 日本の伝統的な彫刻技術を用いて制作されるタトゥーは、一般的に機械を用いて制作される外国のタトゥーとは異なり、非常にユニーク。そのため、タトゥーツーリズムの人気な目的地としての評判も高まりつつある。
- 一方で、日本は長年の社会的背景からタトゥーに関してネガティブな印象を持っており、タトゥーへの柔軟な対応が求められる。すでに対応が進んでいる民間企業も出ており、温泉施設大手の大江戸温泉物語では従来タトゥーが入っている人は入浴禁止としていたが、昨今のインバウンド需要に伴い、指定の布でカバーできる場合は入浴が認められるようになった。
- 日本のタトゥー技術は海外で高く評価されているが、日本ではタトゥーに対するネガティブな評価が拭いきれない。このままでは、海外や外資系企業へ日本人タトゥーアーティストが流出するリスクも高く、日本では積極的な対策が求められる。