本サイトでも取り上げているOpenAIのChatGPTですが、既に世の中に定着している状態と言えます。ChatGPT有料版では高精度なエンジンGPT-4が利用でき、入力をファイルやCSVデータなどでも利用できるCode Interpreterも公開しました。また、ChatGPTのセミナーは頻繁に開催され、多くのChatGPT連携サービスが提供されています。筆者もサービス企画、イベント企画、ビジネスフレームワークを用いた思考の整理、人材募集要項作成、会議のサマリー作成等で活用しています。
ただし課題もあり、1.嘘をつく、2.最新のデータが無い点が、利用者のハードルになり、使いづらいと感じている状況でもあります。
今回は、上記状況を見越した、次世代ChatGPTを提供する取り組みをご紹介します。
独自の大規模言語モデル(LLM)
ChatGPTの成功により、支援していたMicrosoftが自社製品に組み込むことで業界を一歩リードしています。ChatGPTのような大規模言語モデルを作るためには学習コストが非常にかかることから、対抗は大手テック企業に限られ、GoogleのBard、MetaのLLaMA2、Elon MuskのxAIがそれぞれ活動しています。その中で、スタートアップが果敢に取り組んでいます。
トロント本社のAI スタートアップ Cohere は、大規模言語モデルの原著論文を共同執筆したAidan Gomez氏が設立しました。彼はGoogleの研究インターン時代にGoogleの優れたAI技術が一般に拡がらないことに不満をもち、Googleを離れて自らスタートアップを設立しました。CohereのビジネスモデルはB2Bで、大規模言語モデルを用いてサービスを開発したい企業や開発者にソリューションを提供します。直近ではNvidia、Oracle、Salesforce Ventures などから2億7,000万ドル(370億円)の資金調達を発表し、OracleやSalesforce等のサービスのエンジンになることが期待されています。
ユーザーに使いやすい業界特化サービス
ChatGPTは優れているツールですが、活用にはプロンプトエンジニアリングという、効果的なアウトプットが得られるテキストの入力方法、結果に間違いが無いか検証と、その後自分が求めるアウトプットに加工する作業が必要になります。この手間は常にChatGPTを使うわけではないユーザーには学習コスト・手順コストがかかります。そのため、よりユーザビリティを高めたサービスが出つつあります。
Perplexity AIは、AI搭載の検索エンジンおよびチャットボットです。創業メンバーはGoogleやOpenAIで大規模言語モデルの開発に携わり、自らサービスを提供するために独立しました。
Perplexity.aiの特徴は、質問に対してリアルタイムでウェブを検索し、様々なトピックに関する最新情報をソース付きで回答することです。これにより、ChatGPTの課題である嘘をつくことを解決しています。
Copy.aiは、コピーライティングプロセスを自動化するコンテンツ作成プラットフォームです。ChatGPTも利用しているGPT-3をエンジンにして、90以上のユースケースの豊富なライブラリを提供し、トップクラスのAIコンテンツをわずか数秒で作成します。現在、300万人以上のアクティブユーザーが活用し、Microsoft、Nestle、eBayなどの大手企業も利用しています。
Pictoryは、共有可能なビデオクリップを素早く作成できるビデオ編集プラットフォームです。長編動画、ブログ記事、テキストスクリプトなどをインプットとして、Pictoryがナレーション・ストック映像・音楽を組み合わせ、短い魅力的な動画を生成します。
以下、EISの考察です
- ChatGPTの成功に触発され、他のビッグテックも積極的に活動している。今回取り上げたCohere以外にも、画像生成分野でGoogleがRunwayに出資しており、テキスト、画像、動画分野での大規模モデル構築はこれからも活発になっていくものと思われる。
- その一方で、ChatGPTなどの大規模モデルを活用したユーザー向けアプリケーションは、従来に比べてサービス開発時間・コストが大幅に低下するため、今後どんどん増加していくものと思われる。そのためユーザー獲得競争がより熾烈になるものと思われる。
- また、企業が自社のデータを活用してクローズドサービス作ることも増えてきている。例えばモルガン・スタンレーは、OpenAIのGPT-4モデルを用いて、自社の10万件のドキュメントを学習させ、自社のファイナンシャルアドバイザーが顧客にアドバイスする知識を検索できるサービスを提供している。
- これらのは、データを取り扱う全ての企業・個人に影響する。利用者側は、安価で簡単に最新のソリューションを活用できる機会が多く発生するため、ソリューションの活用度によって生産性が大幅に変わっていく。