高齢化は日本に限らず全世界で進行しています。米国では2034年に65歳以上の人口が18歳以下の人口を上回り、2060年には人口の23%、9,470万人との予測がなされています。
高齢者が人生を健康で元気に過ごすことは重要です。世界では高齢者の「ウェルビーイング:良好な状態」を測定し、より良い生活を実現する様々な施策の基準として活用しています。例えば米国ではFederal Interagency Forum on Aging-Related Statisticsが40の指標で発表しており、イギリスでは慈善団体AgeUKがウェルビーイング指標を提示しています。これらの指標は身体的健康のみにとどまらず、高齢者の財産・社会面・安全面まで含めたものであることが特徴です。
これらの背景にあるのはエイジング・インプレイス、高齢者が住み慣れた地域で安全かつ自立して快適に暮らすことです。米国は日本に比べて高齢者のみの世帯が多く、彼らに対して自立を支援する様々なサービス・ソリューションが開発されています。今ホットになりつつあるソリューションの一部を紹介します。
遠隔医療診断
米国は面積が広大で、通院して医療サービス受けるのに不便なため、遠隔医療・診断の技術開発が発達し、多くのプラットフォームプロバイダーがソリューションを提供しています。その中で今回紹介するTytoCareはプライマリケア、日本で言うかかりつけ医と患者を結ぶプラットフォームを提供し、15か国、180以上のヘルスケア団体、65万人以上の患者を抱えており、日本にも2023年に参入予定です。
AIを活用した高齢者モニタリングプラットフォーム
CarePredictはウェアラブル型デバイスを用いて高齢者の活動データをモニタリングし、尿路結石やうつ病、転倒リスクなどの早期発見を提供するプラットフォームサービスを提供しています。家庭や高齢者向け施設で導入することによりは、入院リスクを39%、転倒リスクを69%、入院の滞在期間を67%短縮し、施設の入居者へのスタッフ応対時間を37%向上させています。
高齢者支援プラットフォーム
Papaは大学生と高齢者をつなぐ支援プラットフォームです。「Papa Pals」と呼ばれる訓練を受けた従業員を、社会活動、家事支援、地域交通、技術リテラシーなど、日常業務を支援するサービスを必要とする高齢者を手助けするとともに、日常の支援の家庭で高齢者の健康状態をチェックしたり、友情のような絆を育むことにより、高齢者の社会的孤立に対応しています。Papaは2017年の創業以来順調に拡大し、総資金調達額は2.4億ドル(約320億円)に達しています。
以下、EISの考察です
- エイジングインプレイスの概念は、日本の介護業界が担ってきた役割に非常に近い。技術開発に関しては身体的支援のみでなく、財産面・社会面・安全面踏まえた総合したソリューション提供になっている
- この分野にも投資が集まり、どんどんサービスが洗練されることにより、海外発サービスの日本展開ニーズも活発になると予想される
- 逆に、今まで日本が培ってきた医療・介護業界のノウハウを商品・サービスとしてパッケージ化できれば海外展開できる可能性が大いにある。高齢化先進国である日本だからこそ、世界に先駆けてサービスを開発・発展して行くべきではないか