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アメリカで広がる新しいサード・プレイス

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家でも職場でもない、居心地のいい場所、サード・プレイス。1990年代からアメリカではスターバックスの普及により広く浸透し、人々は仕事の前後や休日などにカフェでコーヒーを飲み、好きな音楽を聴きながらパソコンや本を広げて趣味を楽しむという光景が当たり前になりました。その結果、アメリカのスターバックスは15,000店以上に拡大し、今ではマクドナルドを上回る店舗数(マクドナルドは全米に14,000店を展開)を誇っています。しかし、その流れを一変させたのが新型コロナの大流行でした。人々は外出を避け、店舗もピックアップとデリバリーのみになりました。代わって、自粛期間中人々が集まったのがオンライン上のコミュニティです。共通の価値観や趣味を持つ人々がオンライン上の様々な場所に集まり交流が生まれました。

その後、アメリカでは2021年春から夏にかけて経済再開が宣言されましたが、人々の生活習慣や価値観は大きく変化し、新型コロナ以前とは違うニューノーマルがすっかり定着しています。その際たる例がハイブリッドな働き方です。オフィスに出社するのは週に2、3回、残りの日は自宅から仕事をすることが当たり前になったことで、仕事の前後にスターバックスでゆっくり過ごすという機会は大きく減少したように思います。また、自粛期間中のドライブスルーやデリバリーでコーヒーを買うという習慣も日常となり、スターバックスのドライブスルーレーンはいつも長蛇の列ができています。実際、スターバックスの2022年8月の決算説明会によれば同社の売り上げの3分の2以上はモバイルアプリ、ドライブスルー、デリバリーなど店舗で時間を過ごさない形態で購入されています(参考記事)。それに伴い、店舗も店内スペースを小さくし、オーダーピックアップやドライブスルーに適した形に変化してきています。

目次

新しいサード・プレイスのキーワードはコミュニティ

スターバックスが従来のサード・プレイスから戦略変更を行う中、人々はオンラインのコミュニティにとどまり続けているかというと、そうでもありません。DiscordZoomといったオンラインコミュニケーションを円滑にするサービス、プラットフォームが広く普及したことにより、世界中の離れた場所にいる共通の価値観を持った人と繋がれる素晴らしい時代がきましたが、直接人と会い会話をすることで生まれる体験や感情を100%代替することは不可能です。また、オンラインコミュニティにアクセスする場合自分自身は家にいることが多く、自身の中にある切り替えが難しいのも事実です。そのような人々のニーズを満たすべく、今、新しい形のサード・プレイスが増えています。新たなサード・プレイスでは、従来のサードプレイスではあまり打ち出されなかった趣味の空間を研ぎ澄ませつつ、共通の趣味を持つ人々とつながることのできるコミュニティの要素を打ち出しています。

新しいサードプレイスの事例

Urban Golf Performance

カリフォルニアの都市型会員制ゴルフクラブUrban Golf Performanceは2018年にLos Angelesに1店舗目をオープンし、その後、Orange County、Santa Monica、Carmelと続々新規出店しています。都会で働く所得の高いゴルファー向けに、フィットネスとメンタルを含むトータルトレーニングやクラブフィッティングなどラグジュアリーで付加価値の高いサービスを提供しています。また、ゴルフを嗜む一流ビジネスパーソン向けのサード・プレイスという側面も持っており、メンバーはトレーニング後にラウンジでくつろぎながらおしゃべりをしたり、メンバー限定のイベントに参加し交流の輪を広げています。価格は初回アセスメントが395ドルで、以降1レッスンあたり200ドルと高額ですが、順調に事業を拡大しています。

都市部にある店舗は朝6時から開店しており、早起きなカリフォルニアらしく仕事前にトレーニングを行うビジネスパーソンが多い / image credit: UGP
クラブハウスではイベントが開催され、ゴルフという共通の話題を持つビジネスパーソン同士の人脈構築をサポート。メンバーがUGPの場を借りてイベントを主催することも可能 / image credit: UGP

Traveler Surf Club

Traveler Surf ClubはPacifica、Malibu, Ventura, Santa Cruzといったカリフォルニアを代表するサーフシティでサーフボード保管用ロッカー、温水シャワー、コーチングレッスン、サーフボードレンタルなどの設備やサービスを提供する会員制クラブです。サーフィン後には庭や室内で暖かい飲み物を飲みながらくつろいだり、夏にはビールを片手に仲間とサーフィン談義に花を咲かせています。料金はサーフボードの保管ロッカー込みで月160ドル。また、いい波を求めて移動するサーファー向けに1日のスポット料金も15~20ドルで設定されています。

夏でも海水が冷たいカリフォルニアではサーフィン後に温かいシャワーを浴びて着替えてからリラックスし仲間とおしゃべりできる場所は貴重な存在 / image credit: Liquid Salt

また、上記のような会員制コミュニティ以外にも、従来のスターバックス同様広く開かれたサード・プレイスも存在しています。以前EIS Insightでご紹介したLos AngelesにあるTea at Shilohはお茶をコンセプトに人々が集まり交流する場所として毎晩満員御礼の大盛況となっています。

Tea at Shilohではお茶を片手に、粘土や絵画といったクリエイティブな活動や会話が楽しめる(EIS撮影)

以下、EISの考察です

  • 新型コロナを機に変化した生活習慣や人々が自身の価値観や生きがいを見つめ直した結果、コミュニティ型のサード・プレイスが流行している。この新しいサード・プレイスはスターバックスが築き上げた広く万人受けするものとは異なり、より濃密な趣味の空間かつ同じ価値観を持つ人々と繋がりを持てるコミュニケーションを重視した場所になっている
  • これらの新しいサードプレイスはスターバックスのような大企業による経営ではなく、小規模だがこだわりの強い企業により作られる。その結果、規模は小さいが数が非常に多くなることが予想される
  • 規模が小さくなる分、運営者は収益を安定化させるためにメンバーシップ型のビジネスモデルを採用することが増えると予想されるが、一方で収益のアップサイドを狙うために、そこに集まる人々の興味に合致する商品やサービスを併売していく動きも活発化する(実際、Traveler Surf Clubは隣にサーフショップを併設している)。これにより、企業は自社の商品、サービスの潜在顧客層が集まるコミュニティを把握し、丁寧に自社をアピールすることで、消費者真理に深く刺さるマーケティングを行うことが可能になる

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