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MITが提唱する新たなストーリーテリングの在り方

ここ数年でストーリーテリングの注目度は上がっており、ブランド各社がストーリーを意識したマーケティングを打っています。そんな中、最近MITからストーリーテリングに関して興味深いレポートが発表されました。

目次

MITが検証したストーリーテリングの効果

このレポート内の検証では1つのリサイクル製品(今回の場合は財布)に2種類の売り文句をつけて効果を比較。1つ目でその商品が持つ利点を、例えば「今トレンドの〇〇柄の財布」や「小銭も取り出しやすい」などが挙げられます。2つ目は「昔、僕は車のタイヤでした」や「私はエアバッグでした」といった商品の過去の姿を言及しています。結果、購入数は後者が前者と比べて約3倍と、ストーリーテリングの効果が絶大であることを明らかにしています。

スタンフォード大学の研究でも、ストーリーで包まれた情報は事実の羅列よりも22倍記憶に残る、と発表されており、人の記憶に残ることで結果として購買にも繋がることが読み取れます。

語らないストーリーテリング

このMITのレポートではストーリーテリングの重要性を訴えるだけに留まらず、「多くは語らない」といった新たなストーリーテリングを示唆しています。

例えば、「私は車のエアバッグでした」という売り文句を目にすると、とある人は「私が事故にあった時はエアバッグが私の命を救ってくれたな」とか、また別の人は「車検でエアバッグに不良が見つかって交換したけどあの時のエアバッグがこの商品になってたりして?」なんて想像する人もいます。

シチュエーションは全く違えど、両者ともキャッチフレーズに自分の原体験をプラスすることで自分なりのストーリーを創造し、商品に特別な感情を抱くことになります。これは、あえて語りすぎないストーリーテリングだからこそ成り立ちます。一方、製品が主役かつ設定が細かい従来のスタイルでは逆効果だ、とMITのレポートでも忠告されています。

ストーリーテラーになりたい私たち

語りすぎないストーリーテリングが求められているということは、誰しもストーリーテラーになりたい潜在欲求があるのではないでしょうか。これをを裏付けるように、消費者がストーリーテラーになるようなサービスが次々にローンチされています。

Pineapple

Z世代向けLinkedInとも例えられているPineappleは、求職者と会社のマッチングをサポートしています。自分のスキルや職歴を事実として並べるLinkedInとは違い、自分の人となりをオリジナルコンテンツ(写真や動画)を通して物語り、自分の魅力を企業へ伝えています。

PineappleのUI&UXはInstagramやTikTokに近い / image credit: TechCrunch

Artifcts

遺品整理のために立ち上げられたArtifctsでは、物の写真とストーリーをセットでオンライン上で整理、それぞれのストーリーを家族や友人に共有することもできます。加えて、それらのアイテムを査定してくれるサービスもあり、その後売買につなげることもできます。

「第二次世界大戦中、アメリカ政府が銅を節約するために作ったもので、鉄製のペニーだ」と祖父の遺品を紹介している投稿 / photo credit: Artifcts

以下、EISの考察です

  • 消費者は断片的な情報だけでもストーリーを想像して自分で解釈するスキルを持っている。ストーリーテリングを採用する際には、この消費者の能力を信じて、ブランドは消費者をストーリーテラーとするような”余白”をストーリーに残すことが重要
  • 昨今のストーリーテラーになりたい消費者の潜在欲求は、自分が唯一無二の存在と認められたい欲求にも繋がる。唯一無二を表現しにくい大量生産型の商品であっても、余白のあるストーリーテリングを活用することで、消費者がその商品に独自の意味付けをすることができる
  • ビジュアルストーリーテリング(写真やイラストで物事を語ること)を最大限に活用することで、”語りすぎずに伝える”といった絶妙な匙加減を実現できる

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