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AdobeのFigma買収にみる、デザイン業界での業界構造変化

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Adobeによる競合スタートアップFigmaの買収が発表されました。買収額は200億ドル(約2.9兆円)です。Figmaは2021年5月に100億ドル(約1.4兆円)の評価額だったため、Adobeは2倍の評価をつけて買収したことになります。

よく知られているように、Adobeはクリエイター向けの画像・映像・Web編集ソリューションの最大手事業者です。パッケージ販売モデルから早期に脱却し、クラウド化にシフトして成長してきました。ただし昨年末から成長が鈍化し、企業価値は2021年11月ピーク時の3,300億ドル(約45兆円)から急落し、直近は1,700億ドル(約25兆円)と低迷していました。

対してFigmaは、専門家でなくてもクリエイティブな作業ができる新世代のデザイン編集ツールです。創業者のDylan FieldとEvan Wallaceが大学在学時にベンチャー支援の奨学金を得てFigmaを設立し、以降10年かけて機能拡張・マーケット拡大をしてきました。全世界で利用されており、日本でもサイバーエージェント、三井住友銀行など、多くの事例が出てきています。

Figmaとは?(紹介ビデオ)
目次

Figmaの特徴

  1. Webブラウザで作業できる
  2. チームで共同作業ができる
  3. コミュニティによりノウハウを共有できる
  4. オープンソースによりカスタマイズアプリが開発・利用可能である
サイバーエージェントがFigmaの共有機能を用いてサイト構築を効率化

Figmaで無料に利用できるテンプレートの例、必要な部分のみ修正すれば活用可能

無料で利用できるアイコンライブラリーも充実

更にAIによるヒントやおすすめ提案も充実しており、クリエイターだけでなくエンジニア、プロジェクトマネージャー、学生といったユーザーも多く利用しています。

学生や教育従事者は無料で利用できる

ただしFigmaの年間経常収益(ARR:Annual Recurring Revenue)まだ4億ドル(約580億円)に留まり、AdobeのARRの140億ドルに比べて極小です。Adobeがこのような企業を200億ドルもの金額で買収した理由は、GoogleのYouTube買収と類似しています。2009年時点でYouTubeはマーケットで50%のユーザーシェアだったが売上がなく、Googleも競合であるGoogle Videoを運営していましたが、16.5億ドル(当時のレートで1,500億円)で買収しました。これは、Google経営陣が動画サービスの爆発的発展による既存検索業界の構造変化を予測した結果です。Adobe経営陣もFigmaによる既存業界の構造変化を予測したものと思われます。

以下、EISの考察です

  • 専門的なクリエイターのみ利用する既存業界に対して、FigmaはWeb・共同製作・コミュニティ・オープンソースという概念を持ち込み、これまでのクリエイターだけでなく新しいユーザー層を取り込んだ
  • これはシステム開発業界で起こったノーコード・ローコードツールの浸透と類似しており、専門的な教育を受けてこなかった人でもサービスを作れるようになったため、プログラミング人口が激増し、中途半端な人材が淘汰された
  • 革新的な業界構造の変化は数年で発生しうる。Figmaのサービスリリースは2015年末で、それから7年でこのような専門的業界でも変化が起きた
  • これからの人材は、高い専門性に裏付けされたストーリーを生み出せるスキルと、Figmaのような新しいツールを使いこなせるクリエイティブな能力が求められる

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