昨年はNFT元年と言われ、新しいサービスが活発にリリースされました。猿をモチーフにしたデジタルアートNFTコレクションのプロジェクトであるBored Ape Yacht Clubにはじまり、メタバース内でゲームアイテム・キャラクターのNFTを自作・販売できるSandboxや、NFL史上最高のクォーターバックであるトム・ブレイディが設立し、著名アスリートのサイン入りNFTを売買できるNFTプラットフォームAutographなど、実際に盛り上がっているサービスも立ち上がってきています。この盛り上がりを見せて、最大手のNFTオンラインマーケットプレイスであるOpenSeaでは2022年1月に50億ドルの取引高を記録しました。
日本においても様々なNFTが発表されています。一方で、ユーザー視点ではどうなのでしょうか。仮想通貨アカウントはグローバルで3億人、日本でも2022年2月時点で570万人超と、総人口の約5%が利用している、イノベーター理論におけるアーリーアダプターが利用している状況で、爆発的に普及する前まで来ています。今後の浸透には、使いやすさ、利用できるサービスの多さ、具体的なメリットが必要となります。では現在の状況がどうなっているのか、実際にOpenSeaでNFT購買できるまで筆者が試してみました。
1. 仮想通貨取引所で仮想通貨を購入
現在、NFTの取引には仮想通貨イーサリアムが広く活用されています。その理由として、イーサリアムにあらかじめ決められた契約を自動的に実行する仕組みであるスマートコントラクトが用意されていたことが上げられます。そのため、筆者もイーサリアムを購買することとしました。また、取引所に関しては日本よりもグローバルを優先し、グローバルで人気があり、イーサリアム取引が多いCoinbaseでアカウントを作成しました。
氏名、メールアドレス、パスワードが必要
SMS(ショートメール)を利用して、認証コードを受け取る
本人確認のため免許証などの身分証明書を写真撮影して登録
これで、アカウントの準備が整いました。
次に、仮想通貨を買うための資金をCoinbaseアカウントに送金します。三菱UFJ銀行からのクイック送金が対応しているので利用しました。
2. 仮想通貨ウォレットへ仮想通貨を移管
NFT利用のために、仮想通貨ウォレットを作成します。今回はCoinbaseと親和性が高いCoinbase walletを利用しました。
他ユーザーとかぶらないような、ユニークな名前を付ける
注意して欲しいのは、このCoinbase WalletはCoinbaseのアカウントとは全く無関係であることです。相互連携をとるためにはCoinbase Walletの一意のID(アドレス)を用いて、Coinbaseの仮想通貨口座から送金することになります。
QRコードの下に表示されている文字をコピーする
CoinbaseからCoinbase Walletに購入したイーサリアムを移す
3. OpenSeaでアカウントを開設後、仮想通貨ウォレットを紐づけ
前述のようにOpenSeaは世界最大のNFTマーケットプレイスです。イーサリアムを保有しているウォレットがあれば誰でも作品の売買ができ、また出展も可能です。
OpenSeaのアカウント開設には、イーサリアムを保有しているウォレットが必要。PCブラウザから、筆者の場合はCoinbase Walletを選択
PCブラウザの画面にでてくるQRコードを、携帯のCoinbase Walletアプリから読み取る
これにてOpenSeaアカウントの作成が完了しました。ここから、アート、音楽、写真、スポーツ、トレーディングカード、様々な権利のNFTを売買できるとともに、個人出店することができます。
OpenSeaの注目アカウント
Bored Ape Yacht Club
一番有名なBored Ape Yacht Clubは、100ETH(約3,800万円)前後で取引が行われています。
Flyfish Club
世界で最初のNFTレストランとして2023年にニューヨークにオープン予定の⾼級プライベートダイニングであるFlyfish Clubは、⼊店に必要となる会員権を販売しています。現在の取引価格は、およそ4ETH(150万円)前後です。
onigiriman
日本人クリエイターも活動しています。作品の累積取引量が270ETH(約1億1千万円)を突破したonigirimanのアートは、0.3ETH(約12万円)から取引されています。
以下、EISの考察です
- ITリテラシーが一定程度あるユーザーならば、NFT取引に必要な口座開設・売買準備まですべてデジタルで作業が完結できる簡単な手順である。実際のユーザーはこれに加えてDiscordコミュニティで特典を得る・コミュニケーションする、OpenSea以外の取引所も活用するなど、より多くのサービスを利用している。NFTでビジネスを行う側としては、複数サービスを当たり前に使うユーザーが大勢を占める世界を実際に体感し、彼らに対して何をどのように提供できるか、肌感覚を持つ事が重要である
- NFTは盛り上がっているが、グローバルで変化が非常に激しく、誰が勝者か分からないビジネス領域である。日本国内向けに限定したサービスも出てきているが、このような状況を考えるとマーケットの本流である米国を中心とした、グローバルの視野で取り組むべき
- 一般的に新しいビジネスの黎明期には既存のルールや規制が対応できない。NFTも例に漏れず、著作権や仮想通貨の税制等、日本だけでなく世界的に法整備が追いついていない。たとえばOpenSeaの無料登録で発行されたNFTの8割以上が不正、という指摘もある。日本の文化として、ルールや法制度が整ってから参入することを好む傾向にあるが、グローバルではこの状況でもNFL、Disney、Nike、LʻOréal等大手が積極的に参入して何ができるか模索しながら戦っている。日本とは全く異なるスピードで動く世界を意識しないと、あっという間に遅れを取ってしまう