Web 3.0というキーワードをよく見るようになりました。この言葉は仮想通貨イーサリアムの共同創業者ギャビン・ウッド氏が2014年に提唱したのち、昨年投資熱が拡がったことで話題となり、日本でも昨年末から広がりを見せています。
ウェブ進化の歴史
Web3 .0を支持する人々は、Webの歴史を大きく3段階に定義しています。
- Web 1.0(~2004年まで):ユーザーは企業からの情報発信を受け取るのみ
- Web 2.0(2005年~2020年):ユーザーはSNSにより相互発信できるようになり、サービスをGAFA等の超巨大企業が提供
- Web 3.0(2021年~):ユーザーが自らの個人情報を管理し、サービス毎に情報提供を選択できる時代
Web 3.0実現のために必要なこと
Web 3.0のコンセプトは、GAFAのような超巨大テック企業により独占されているサービスやデータを個人に取り戻し、個人同士で経済的なサービスを提供できるようにしようとするものです。そのためには以下が求められます。
- 分散型:アプリケーションやデータ提供を1箇所ではなくインターネットに存在する多くのサーバーから提供
- オープン化、オープンソース:定義、ソフトウェア、プロトコルを公開し、全世界で利用・改善提案をうけることにより信頼性・品質を担保
- 透明性:データを誰がどのように改変したか明確化し、改ざんされないようにする
実現に必要な要素として以下が挙げられています。
- ブロックチェーン
- 暗号化プロトコル(Cryptographic Protocols)
- 分散型金融(DeFi, Decentralized Finance)
- ソーシャルプラットフォーム
- NFT(non-fungible token)
- 分散型自立組織(DAO, Decentralized Autonomous Organization)
基礎技術や仮想通貨、NFTなどの単一サービスが主流ですが、組み合わせたサービスも出てきています。例えばGameFiは、ゲーム内通貨をNFTで管理し、ゲームを遊ぶ毎にお金を稼げる仕組みです。
今後、サービスの中心ではなく周辺分野でもスタートアップが参入していくものと見られます。例えば、ゲームイベント等の出席に応じて表彰バッチを与えるサービスをブロックチェーンベースで開発し、仮想通貨による支払と連携させるという事例もみられます。
オープンソースの分野も活発です。IOTAは、オープンソースの分散型台帳および暗号通貨です。ブロックチェーンの代替として、車内での買い物、国際物流のトレーサビリティの確保、個人IDの証明、個人のヘルスデータの管理等に利用できます。
国が個人間取引の証明に寄与する動きも Web 3.0と言えます。欧州連合(EU)では、電子署名による本人認証と改ざん防止を証明するeIDAS規則を2016年に施行しました。この実装は分散型であるブロックチェーンや暗号化技術を用いて提供されており、フランス・ドイツ・イタリア・スペインなどで不動産取引や金融取引の証明に用いられています。
以下、EIS の考察です
- Web 3.0は仮想通貨・金融事業者が牽引役となり、今後も活発な投資が期待される。勝者は決まっておらず、GAFA対抗という名の下に、これからも新しいサービスが多数出現する。スタートアップは仮想通貨領域だけでなく、周辺のユーザー向けサービスの展開で活性化する
- 欧州中心に発達している電子政府の動きもWeb 3.0を加速させる。取引に透明性・信頼性を持たせるための証明を政府と連携することにより、民間サービスは信頼性を担保でき、アーリーアダプターではない人々がサービスを利用するきっかけになり得る
- 新しいサービスは若い世代、新しい感性のユーザーによって支持される。支持が一定になると業界地図が一気に入れ替わるため、既存の事業者はWeb3.0の一部でも試して実施して行くことが重要になる
参考文献