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パタゴニアは何故ワインを作るのか?

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SDGs、ESG、 地球温暖化対策や脱炭素社会、地産地消や循環型経済、  ダイバーシティとインクルージョン、生態系と生物多様性、バイオエコノミー…

ここ近年、これでもかと嫌になるほどに、人間として企業として順守すべき価値が提唱されています。その勢いがあまりに強く、伝統的には「外部不経済」と呼ばれてきたこれらの要素が、税や規制の力に頼ることなく企業や商品・サービスの価値として定着しつつあるようにも見えます。すなわち、消費者が自主的な選択で、購買活動や投資活動において外部経済の内部化を進めるほどに「賢く」なっているのかもしれません。

米国をはじめとする世界の大衆消費市場では外部不経済の指標化が図られ、各企業は競って指標の点数を競うようになりつつあります。個人的には、こうした状況はある種の同調圧力となって、数多の企業による「見せかけ」の対策と宣伝を助長しているのではと危惧しています。そして「見せかけ」の対策は、すぐに見破られ、本当は重要なはずの様々な価値が陳腐化してしまう可能性すら感じています。

SDGグローバル指標 / photo credit: 外務省

そんな中、私の好きなブランドである、パタゴニアは何故ワインを作るのかと題されたインタビュー記事に出会いました。記事そのものにはさほど感銘を受けなかったのですが、企業のブランディングを考える上で色々なインスピレーションや示唆があるように思われましたので、以下に書いてみたいと思います。

image credit: Bloomberg


まず、食はライフスタイルの根幹であるということです。ブランド価値は、行き着くところ必ずライフスタイル提案に到達します。ここで言うブランド価値は認知度ではなく、当該ブランドがもたらす付加価値です。分かり易くいえば、見た目や性能が同じ車が二台あり、一台にはTeslaのエンブレムを付けもう一台にはToyotaのエンブレムを付けた場合、それぞれ消費者が買いたいと思う値段に差がついた場合、その差がTeslaとToyotaのブランド価値の差ということになります。TeslaはEVを推し進め、Toyotaはその20年以上も前に世界先駆けてハイブリッド車を販売し、地球環境問題にソリューションを提供してきましたが、今日そのブランド価値に差がついているとすれば、その一方にはよりクールで人々が憧れるようなライフスタイル提案があるからだと言えるでしょう。

image credit: Tesla

さて話を戻すと、食は私たちのライフスタイルを構成する、最も日常的な重要な要素です。私たちは毎日何かを口にしている訳ですが、何をどういうシチュエーションで口に運ぶかによって、色々な意味やメッセージを感じています。多くのラグジュアリーファッションブランドや車ブランドが、バー、レストランやカフェを展開しているのも、顧客や顧客候補に対して彼らが提唱するライフスタイルの一端を、日常的に伝えられるからという側面があります。

ワインは食の中でも歴史が古く、とりわけ重要で象徴的なものです。ご存じのとおり、キリスト教においてはキリストが人々のために流した血の象徴であるとし、ミサのたびに司祭が口にすることで、体内にキリストの愛の精神を浸み込ませるという儀式を行うのです。他方でワインは、嗜好品の代表格です。広辞苑によれば、『嗜好品:栄養摂取を目的とせず、香味や刺激を得るため の飲食物』とされています。人が生きる上で必要不可欠ではないが、豊かさを与えるものと言えます。こうしたことから、その値段もペットボトルの水と同様に安価なものから、ボトル一本で車と同じくらい高価なビンテージものまで幅広いのです。

こうした歴史的な背景やプレミアム嗜好品として発展してきた証左として、フランスのラグジュアリーブランドの多くがワイナリーを保有し、ワインやシャンパーニュを製造しています。エルメスはFourcas Hostenを、シャネルはRauzan-SéglaCanonを、ルイヴィトンは言わずもがなでDom PérignonKrugなどフランス最大のシャンパーニュ・コングロマリットとなっています。

Fourcase Hostenの葡萄畑では全て手作業で育てられている / photo credit: Vinos

さらに、ワインを含む食の生産工程である農業は、地球の環境問題や生態系、生物多様性の問題と密接に絡んでいます。そういう意味では、現代社会におけるワインの活用価値はさらに高まっており、その商品コンセプトから製造工程の一つひとつについて、ナチュラルやオーガニックにこだわることで、SDGsやESGといった流行キーワードに乗りつつ「見せかけ」ではないブランドの象徴/宣伝塔を作ることができるのかもしれません。

パタゴニアのファンがそのワインを口にして、同社の掲げる価値観やライフスタイルの象徴を体内に内部化させた時、ブランドと個人の関係は信仰と言えるほど強固なものとなるのです。

以下、EISの考察です

  • SDGsやESGなどの価値実現が求められる現代社会において、「見せかけ」のみのマーケティングは長続きしない
  • 本質的なブランディング、つまりライフスタイル提案の中で、如何に新しい価値を体現・提唱していくかが重要となる
  • その一つの方法として、人々のライフスタイルの根幹をなす食と、その裏にある農業を上手く活用できるのではないか
  • とりわけワインは、歴史的な背景や文化的な発展もあり、高級ブランドにとってのシンボルともいえるアイテムである
  • パタゴニアが何故ワインを作るのかという問いを、ブランディングが不得手な多くの日本企業の学びにして頂きたい

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