今年6月、設立からわずか2年の「IRL(In Real Life)」は1億7000万ドル(約190億円)のシリーズCラウンドの調達を完了させ、17億ドル(約1900億円)の評価額でユニコーンの地位を確立させました。
IRLはSNSから一線を画し、自身をソーシャルカレンダーと謳っています。ソーシャルカレンダーとは、自身のカレンダー情報を友人らと共有できたり、分野横断的なイベント情報が集約されているサービスです。以下のような理由により、今後このソーシャルカレンダーのニーズは高まっていくのではないでしょうか。
1. Z世代を生きる彼ら彼女らの友情を深めてくれる
既存のSNSとは違い、ソーシャルカレンダーは「直接会う」ことにフォーカスして友人同士の仲を深めてくれようとしています。
- Instagram、Twitter、TikTok
プライベートアカウントとオープンなアカウントを両方作ることで、友人とも、そして知らない人とも仲良くなるきっかけを与えてくれるが、前者のすでに知り合っている友人との関係性にフォーカスしている訳ではない - Discord、Reddit
趣味は同じだけど会ったことがない、というタイプの人との交流がメイン - Facebook
面識のある友人をフォローし投稿を通じて、友人同士の仲がより深まるようなサービス設計だが、Z世代はほぼ使っていない - IRLを始めとするソーシャルカレンダー
「イベント」という直接友人に会うきっかけを、情報としてGenZに提供することで、彼らの友人同士の仲を深めてくれる
従来はFacebookが面識のある友人との関係性を深めてくれていましたが、ソーシャルカレンダーは形を変えてこの役割を果たそうとしています。
2. イベント周りのアクションが効率化される
<参加側>
- Googleでイベントを探し、LINEで友達に予定が空いているかを聞き、Googleカレンダーで場所や時間の情報を入れて、と1つのイベントなのに3つのプラットフォームにアクションがまたがっており煩わしさが課題である。それがIRLのようなソーシャルカレンダーではGoogleカレンダーとの同期やメッセージ機能があるので、1つのプラットフォームで完結できる
- イベントを探すと単に言っても複数のウェブサイトから情報を取ってこなければならず、面倒である。IRLでは情報が集約化されているので、この悩みも解決される。例えば、スニーカーファン向けにSneakerheadsというアカウントがあり、NikeやAdidasといったブランド横断的な販売情報がわかるようになっている
<運営側>
- 小規模なイベントの場合、集客に多大な労力がかかる。IRLではプラットフォーム上の不特定多数の人にイベントを宣伝が可能。さらにStanfordやUCLAといった有名校と提携しており、今後キャンパス内のイベントにも多く利用されることが期待できる
- 収益が見込めないようなイベントの場合、資金集めが課題である。そこで、IRLはそういったイベントの資金調達を支援するファンドの新設を発表。資金集めの苦労が緩和され、イベントの活性化が見込める
以下、EISの考察です。
・オンラインで生きていたGenZはCOVID-19を経て直接会うことの大切さを実感し、友人とFace-to-faceで会いたいと感じている。ソーシャルカレンダーはそんな彼らのニーズを汲み取っている
・ソーシャルカレンダーの普及により小規模なイベントが増え、今まで注目されなかったコンテンツクリエイターらに活躍の機会が与えられる
・イベント周りの多段なプロセスに対する煩わしさを解消するために、支払い機能など他のイベント関連機能もソーシャルカレンダーに追加される
参考文献