ソースコードを全く書かない、もしくは少しのコードでアプリケーションを開発する手法である、「ノーコード/ローコード開発」が全世界で急速に浸透しています。
ローコード開発プラットフォームを提供するユニコーン企業Outsystemsのレポートでは、米国企業の41%が2019-2020年にノーコード/ローコードアプリケーションを使用しており、2018-2019年の34%から増加しています。また、2021年に133億ドル~177億ドルの市場規模が、2027年には588億ドル~1,254億ドルに成長する予測も出ています。
ノーコード/ローコードのアプリケーションは新規事業開発・サービス提供にも極めて有効です。開発者・デザイナーなどのプロフェッショナルに依存する部分を極力減らし、現場のメンバーでサービス構築を実施することにより、新規事業開発の試行錯誤プロセスを素早く回すことができます。
EISが注目する、新規事業開発・サービスにおいて有効・特徴的なスタートアップ、ツールを取り上げます。
1. Webflow (https://webflow.com/)
Webflowは、WordPressに類似したWebサイト製作プラットフォームです。2021年2月に$140M(160億円)を調達し、$2.1B(2,400億円)の評価額に達しています。Webflowはテンプレートを利用することによりデザイナーなしでWebページを制作でき、更にアンケートやコメント等のコミュニケーションシステムとの連携など、高度な機能も簡単にカスタマイズできます。EISも自社Webサイトに利用しており、デザイナー抜きの社内チームで運用しています。
<Webflowでできること>
- WordPressでは開発者が必要だったページ作成のデザイン修正ができる
- 外部システムと組み合わせ、有料会員ページ構築できる
- 決済システムと組み合わせ、ショッピングサイトを制作できる
- A/Bテストができ、サイトの回遊率を高められる
2. Zapier (https://zapier.com/)
ZapierはメールやSlack、申込フォーム、GoogleSpreadsheet、ECショップサイト、顧客管理システム、受注管理システムなど、クラウドのシステム間をUI操作だけで接続できる相互連携機能を提供するプラットフォームです。連携プラットフォームの中では最大手のスタートアップで、2021年3月時点で$5B(5,700億円)の評価額です。
Zapierを利用することにより、今まではマニュアル対応していたデータ抽出・加工・別のシステムへの登録・更新業務を自動化でき、担当者はよりサービス改善・顧客対応に集中できるようになります。EISもZapierを利用して新規サービスの業務自動化を進めています。
<Zapierでできること>
- Amazonで注文が入った際、GoogleSpreadsheetに自動で注文レコードを作成
- メールの問合せをGoogleSpreadsheetで登録し、更にSlackグループへ通知
- 退会申請を自動でメール配信システムに連携して配信停止フラグを立てる
- 顧客の決済がエラーになった際に管理者用Slackグループに通知
3. Bright Data (https://brightdata.com/)
Bright DataはWeb上のデータを収集し、構造化して分析できるプラットフォームを提供するスタートアップです。ニュース記事、ユーザー投稿、商品など、アクセスできるデータを収集し、マーケティング・競合分析・トレンド分析等に利用します。EISでは本サービスのうち、Instagramのプロファイル、ハッシュタグ、投稿を検索して、マーケティング目的に合致する対象ターゲットを抽出する作業に利用しています。
<Bright Dataでできること>
- キーワードにひっかかったニュース記事を収集
- Instagramからトップインフルエンサーをフォローするユーザーリストを抽出
- Amazonから特定のキーワードを提供している競合商品リストを収集
4. Bubble.io (https://bubble.io/)
前述のWebflowに比較して、より本格的なWebアプリケーションを開発・リリースできるプラットフォームです。デザイン・データベース・外部システム連携までノーコードで開発可能なため、本格的なサービスを投入するスタートアップには有効なツールです。2021年8月に$100M(111億円)を調達し、更に機能開発・サービス拡大を目指しています。
<Bubble.ioでできること>
- 本格的なユーザ管理を備えたアプリケーションを構築
- スマートフォン用専用アプリケーション(PWA)を構築
5. 8080Labs (https://8080labs.com/)
ドイツのスタートアップである8080Labsは、AI開発でよく利用されるPandasデータ分析・操作ツールのGUIツールを提供しています。AI開発においては、非常に多くのデータを何度も何度も加工・分析して、最適なモデルを作り込んでいく必要があり、いちいちコーディングしなくてもUI操作で簡単に加工・ビジュアライズができるツールは非常に有効です。ソフトウェア大手のDatabricksは2021年10月に8080Labsを買収し、自社のAIソリューションの拡大とともに8080Labsを利用している開発者コミュニティも取り込もうとしています。
以下、EISの考察です
- ノーコード/ローコードアプリケーションは今や新規ビジネスには無くてはならないサービスである。複数のノーコード/ローコードアプリケーションを使いこなし、変化の激しい顧客のニーズに合わせていくことができる企業が勝者になり得る。
- 経営者は教育に投資し、ノーコード/ローコードアプリケーションを使いこなせる従業員を増やし、システム開発の内製率を高めていくことが必要である。
- それと同時にプロフェッショナルで対応する部分と内部人材で対応できる分を切り分け、IT開発会社やデザイナーとより柔軟な協業体制を構築することによりサービス発展に伴う体制増強へスムーズに移行できる
参考文献