ナイジェリア発のEdTechスタートアップのUstackyは、ウェブとモバイルをベースにした学習プラットフォームで、コンピュータ・プログラミングとITのトレーニングと認定「マイクロ・ディグリー」を提供しています。彼らは、質の高いビデオコンテンツ、クイズ、オンラインプロジェクトを通じて、アフリカの人々に業界関連のテクノロジースキルを教え、受講生の就職を支援することを目的としています。ナイジェリアの失業率は、2020年第4四半期の27%から、現在は33%に上昇しており、Ustackyは、多くのナイジェリアの失業中の若者に向けてプロモーションを行なっています。
Ustackyの発足から現在に至るまで
2019年に設立されたUstackyは今回、Telecel Group Africa Startup Initiative Program (ASIP) powered by Startup bootcamp AfriTechの第一期生として受け入れられました。 ASIP Aceleratorは、Ustackyに資金提供とメンターシップのサポートを行います。Ustackyは、2021年1月に正式にサービスを開始して以来、現在、約4,000人の登録ユーザーがおり、2,600人以上が彼らのサービスを定期購読しています。また、Ustackyはユニークなマーケティング手法を採用しています。ナイジェリアのNGOであるData Science Nigeriaや、ナイジェリアのスタートアップインキュベーターであるWennovation Hub、そしてLagos State Employment Trust Fundといったナイジェリアのステークホルダーとのパートナーシップを通じて、奨学金プログラムを提供しています。中でもLagos State Employment Trust Fundを通じては、最大20,000人の学生を育成することを目指しています。
サブサハラ・アフリカとデジタル・リテラシー
Ustackyが提供するサービスは、アフリカ特有の問題に対応しています。世界銀行が最近発表したレポートによると、世界各国のLinkedInページの普及状況を分析した結果、サハラ以南のアフリカのデジタルリテラシーは、世界の他の地域に比べて遅れていることがわかりました。一方でナイジェリアとケニアのデジタルリテラシーはサブサハラ・アフリカの他の地域よりも高くポテンシャルの高さが窺えます。
サハラ以南のアフリカでは、若者の人口が60%に達し、2050年までに89%増加すると予測されているにもかかわらず、世界で最も多くの若者が失業しています。ナイジェリアのような国ではハイテク企業が急速に増えていますが、依然として大きなスキルギャップがあり、地元の人材を雇用したいと考えている企業は不満を感じています。アフリカのデジタルリテラシーの格差は周知の事実であり、他の著名なEdtech企業も、アフリカの優秀なエンジニアのトレーニング、審査、雇用という課題に取り組むため下記のようなプラットフォームを立ち上げています。
これらのプラットフォームは、投資家を募り、学生を入学させることに一定の成功を収めていますが、(a)コースの質、特に従来の学校に取って代わるだけの質があるのか、(b)そのような方法で訓練を受けた学生に十分な仕事があるのか、といった疑問が残っています。どちらの問題も、これらの革新が現在のニーズや現実に合っているかどうかということです。
以下、EISの考察です
ギグ・エコノミーとEdTechは、アフリカではまだ十分に普及していない分野です。いくつかのスタートアップ企業がこの分野で先行者利益を追求していますが、その成功は彼らのビジネスが以下の問題にどう対処するかにかかっています。
- アフリカの接続性の課題:サハラ以南のアフリカ諸国では、信頼できる電気やインターネットへのアクセスがない人が多くいます。プラットフォームは、信頼できるエネルギーとITインフラの欠如をどのように克服できるのか。
- 卒業生の質:EdTechプラットフォームでプログラミングを学ぶ学生は、高収入の仕事に就けることを期待しており、多くのプラットフォームがジョブマッチングをサポートしています。しかし、多くの雇用者はある程度の経験を積んだ開発者を好むため、「鶏と卵」のような関係になっています。どうすればプラットフォームは卒業生の競争力を確保できるのか。
- スケール: サハラ以南のアフリカには11億4千万人の人口がありますが、その人口は46の国と数多くの言語に分かれています。EdTechプラットフォームは、地域統合の低さがもたらす文化的・政治的障壁を克服して、規模を拡大するにはどうすればいいのか。
EISと国内外のパートナーは、アフリカのさまざまな地域で、現地の技術力を高め、開発を促進することを目的としたプロジェクトを実施してきました。EISのアフリカでのアプローチは、地元のイノベーションと国際的な洞察力を組み合わせて、実用的なソリューションを開発することです。
経済が発達している日本では、高度な技術を持つ人材の育成に成功しています。さらに、日本では専門的なトレーニングの多くが、アカデミアよりも民間企業によって支えられています。そのため、日本の企業は、実践的なデジタルスキルを身につけるために、従業員向けのEdTechに取り組むのに適しているかもしれません。一方で、Ustackyの「高度なスキルへのアクセスを民主化する」というアプローチは、先進国でも取り入れることができます。例えば急速に高齢化が進む日本では、先進国の中で圧倒的に高齢者がデジタルに疎いという課題を抱えていることもあり、Ustackyの初心者でも分かり教育コンテンツは日本でも活用できるでしょう。
参考文献