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Michael Jordan、大坂なおみなど20名以上の有名アスリートがこぞって投資した「Buzzer」をご存知でしょうか。ニューヨークを拠点とし、Twitterに7年間勤めていたBo Hanによって昨年設立されたスポーツストリーミングを提供する会社です。今年6月、シリーズAで2,000万ドル(約22億円)を調達したばかりですが、スポーツストリーミングといえばPeacockやESPNが有名どころであり、何も目新しいところはないはずです。では、なぜここまでの額を資金調達できたのか、その鍵はGenZにあります。
GenZのスポーツ離れ
ある調査会社によると、GenZはミレニアル世代と比べて、スポーツのライブ中継を定期的に見る割合が半分、とスポーツ離れが窺えます。スポーツ界にとって今後大きな収益源となるGenZをいち早く引き留めたいところです。
そもそもGenZはスポーツが嫌いなのでしょうか。その答えはNoです。2~3時間にも及ぶ試合をテレビの前に座って見続ける、といったコンテンツの消費モデルがGenZとは合わないのでしょう。TikTokなどのSNSを普段使いしているGenZは、時間的に短く、かつパーソナライズ化されたコンテンツに慣れており、従来のスポーツ観戦では退屈に感じてしまうのです。
従来の消費モデルに終止符を、GenZ向けな新たなスポーツコンテンツ
この流れに気づいた様々なプラットフォーマーがGenZのスポーツ離れを食い止めようとしています。冒頭で取り上げた「Buzzer」は、自分の好きなチームや選手を設定すると、試合の重要な瞬間を通知で教えてくれます。例えば、NBAの試合であなたが好きなLakersが相手を追い抜こうとしている瞬間に、通知を受け取ることができるのです。その通知に従って0.99ドルを払えば、大事な瞬間を見逃さず観戦できるという仕組みです。
その他にも、「Turner Sports」ではNBAと提携し、1ゲームだけもしくは10分だけといった単位でライブ中継を提供、また「Snapchat」では従来、試合後に見るはずのハイライトをリアルタイムで投稿しています。
コミュニティを利用したプロダクト開発
現在正式リリース前の「Buzzer」ですが、プレリリースされたアプリをダウンロードすることで、GenZの溜まり場であるDiscord上のユーザー限定コミュニティに参加することができます。そこではコンテンツに関するフィードバックが頻繁にやりとりされていたり、ユーザーインタビューの対象者を募ったり等、プロダクト開発に直結しているのです。
以下、EISの考察です
- スポーツのみならず、GenZをターゲットとするプロダクトやサービスを開発する際には『マイクロトランザクション』と『パーソナライズ』が重要になってくる
- 加えて、ユーザーと開発サイドがフラットな関係になれる場を作り、プレローンチしてからユーザーの声を集めつつ完成品を目指す、といった「Buzzer」のような開発スタイルはGenZをターゲットに置く場合に主流となり得る
- 「Buzzer」等のユーザーがよりスポーツに関心を持つようになると、ESPN等の既存のストリームサービスへ流動することも考えられる。つまり、「Buzzer」等の新しいプラットフォーマーは従来のスポーツ関連サービスのマーケティング的役割も兼ね備える
参考文献