GoogleがChromeブラウザからサードパーティクッキーをブロックする期限を、当初予定より1年遅れて2023年まで延期すると発表しました。
これまでのデジタル広告はサードパーティークッキーを用いることにより、名前は分からなくても、誰(性別・年齢・居住地)が・いつ・どこで・何のページを見て、何の興味があるか、といった非常に正確な個人の情報を把握できました。そのため、消費者がどこのサイトに行っても、広告配信事業者は消費者の全ての行動を把握した上で広告を配信することが可能でした。
この仕組みに大きくくさびを打ったのが欧州や先進地域での個人情報保護規制の動きです。欧州でGDPRが2016年に、カリフォルニア州でCCPAが2018年に成立し、個人情報の管理が厳格になりました。
それに追随するようにAppleが2017年からSafariブラウザからサードパーティーをブロックする機能を搭載しました。Googleも遅れて2020年にChromeブラウザへのブロック機能の実装を2022年までに実施する発表をしましたが、冒頭で取り上げたように1年延期しています。
Googleがここまで遅れている背景として、スマートフォン等のハードウェアが収益源であるAppleにとって、ブロック対応は消費者が無駄な広告を排除できるメリットになるのに対して、広告が収益源であるGoogleが同様の対応をすると自社ビジネスの悪化に繋がるため、個人情報保護と自社ビジネスを両立する仕組みを構築しようとしているためです。
Googleは2019年にPrivacy Sandboxを公表しました。これは、Chromeブラウザでサードパーティークッキーをブロックして個人情報を守りつつ、AIを用いてユーザーの大まかな属性を広告配信事業者が把握できる機能を提供しようという試みです。
Googleはこの機能を用いることにより従来の広告と同様の効果を得られると主張していますが、これは広告配信側でGoogleのシステムを使う誘導にもなるため、Googleがより強くなることも意味しています。そのため、Appleや他のブラウザメーカーはこの動きには乗らず、広告配信業界から反対する動きも出ています 。
以下、EISの考察です
- 広告を出す事業者は、短期的にはGoogleだけでなく、Facebookや楽天など顧客IDを持つサービスでの広告配信を検討していくべき
- ただしこの逆風の中でもGoogleは自己を強化しようとしている。中期的にはGoogleのような名無しユーザー向けの広告と顧客IDを把握しているユーザー向け広告のポートフォリオが求められる
- 一番重要なのは、自ら消費者の動向を把握して顧客情報を管理し、Google、Facebook等のデータを組み合わせて分析・アクションを打つ流れが拡がる
- 消費者個人にとっては、センシティブな人はAppleやスタートアップが提供するブラウザ、リスクを許容する人はGoogle等、より選択の自由がある世界になる