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昆虫食はブームになるのか?

このインサイトについて、さらに詳しく動画で解説しています(11:39)

皆さん、突然ですがこの写真を見てどのように思われますか。「気持ち悪い」「絶対に無理」という言葉がよぎりましたか。‍

よーく見ると、虫の佃煮みたいなものがトッピングされている

数年前から話題になっている「昆虫食」ですが、1年前に無印良品がコオロギせんべいを販売し、即日完売したことも記憶に新しいのではないでしょうか。昆虫食が話題になってきた背景には、地球上の人口増加に伴う食糧危機の深刻化、赤肉の多大な消費量による環境負荷の増大、とくに温室効果ガス増加を通じた地球温暖化への懸念があります。ビーガンや菜食主義者の増加にも見られる動物福祉の観点も要因となっています。

しかし、アジアの一部(タイなど)、中南米の原住民、アフリカ諸国など、食文化として昆虫食が根付いてきた地域を除き、まだまだ昆虫食はメジャーとは言えません。特に西欧諸国では、昆虫食が文明社会の持つべき規範や倫理観に反するとまで考えられてきたようです。というのも、EUは今年の5月に初めて公式に昆虫を食材として認定したというニュースがあったぐらいなのです。逆に言えば、それだけ昆虫食への抵抗がまだまだ大きいということでもあります。昆虫食に対する既存の価値観を壊そうと欧米でもスタートアップが登場しています。

CHIRPS

サンフランシスコで2013年に設立され、アメリカ版「マネーの虎」とも言われる「シャークタンク」にも出演した企業です。シャークタンクとは投資家たちの前で新規事業のプレゼンをし、その場で資金調達の交渉をするといったテレビ番組です。その場で$100,000(約1100万円)の調達に成功しました。金額は大きくないですが、話題のテレビ番組に出演したことありネットニュースにも多く取り上げられました。焼き菓子用の粉やチップスを販売しており、味や形からは虫を想像させませんが、「EAT BUGS」というロゴはど直球です。

photo credit: Chirps

JiMiNi’S

2012年にパリで設立され、これまでに$1.1M(約1.2億円)ほど資金調達しているブランドです。プロテインバーやグラノーラを販売しています。しかし、このブランドの中で最も”Wow”となる商品は「Insect Snack」と呼ばれる虫の形をしたスナックです。16種類ほどあるこのスナックはキュートなパッケージとは裏腹に中身は虫そのものです。まさに昆虫食の真骨頂とも言えそうです。

photo credit: JiMiNi’S

このように欧米でもスタートアップが出てきていますが、Impossible Foodsのような植物性タンパク質を使った代替肉ほどのインパクトで広まるには至っていません。

歴史を紐解けば、人類は太古より昆虫を重要なタンパク源としてきました。それが文明の発展とともに消えていき、今では多くの人々が昆虫食に対して嫌悪感や恐怖感を感じています。見た目や香り等への生理的な嫌悪、衛生への懸念、怪奇性など様々な要因が考えられますが、それらに共通しているのは、理屈ではなく直感的に嫌っているということです。

何百年もの間に培われた人間の五感を変換できるかどうか、つまり、人間界の壮大な実験とも言えるでしょう。既存の価値観が崩された時にイノベーションは起こりますが、昆虫食によって食全体にパラダイムシフトが起こる日もそう遠くないかもしれません。

さて、今後、昆虫食は広まるのでしょうか?この論点は、人間や社会に関する興味深い問いを投げかけてくれているように思えます。

  1. 人は、論理により、意識的に五感を変換できるか?
  2. 人は、慣れにより、無意識的に五感を変換できるか?
  3. 昆虫食を忌み嫌う西欧文化が世界に影響を与えるこれまでの構図が変わりうるか?
  4. 好奇心旺盛なファーストムーバーの自己実現や承認欲求に刺さるのではないか?

冒頭にお見せしたような写真を見て、多くの消費者が「美味しそう!」と思える日は来るのでしょうか?

参照文献

  1. CHIRPS
  2. JiMiNi’S
  3. The Brussels Times

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