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VisaとMastercardが金融サービスにおける気候変動イノベーションをリード

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世界最大の決済ネットワークであるVisaとMastercardの両社は、カーボンニュートラルをはじめとする気候変動に配慮した新商品とその取り組みを発表しました。多くの大手ブランドが気候変動対策に積極的な姿勢を見せていることもあり、ぱっと見ではこのニュースにさほど驚かないかもしれません。しかし、よくよく考えてみると、世界2大金融機関が環境に配慮した姿勢を全面的に打ち出したのには、もっと興味深い理由があるのです。

消費者に一体どんなメリットがあるのか?

VisaとMastercardは共に、気候変動に配慮した購買行動に応じて特典を得ることができるクレジットカードを新たに提供します。

2021年11月Visaは、カード会員の環境に配慮した消費促進を目的とした、サステナブルに焦点を当てた新しいクレジットカードの発行を発表しました。Visa Eco Benefitsは、消費者のサステナブルな購買やライフスタイルへの需要の高まりに応える形でまずはヨーロッパで提供が始まり、2022年内にはVisaが展開している残りのグローバル地域にも拡大される予定です。

特筆すべき機能・特典は以下の通りです

  • 気候変動対策のスタートアップ:ecolytiq社が提供するレポートを用いた、個々の消費者の支出に基づくカーボンフットプリント計算機
  • 支払いを通じて自分のCO2排出量を相殺することができる、カーボンオフセット機能
  • カード会員向けリワードの拡充

photo credit: Future

Visaの特典拡充の一例として、Futureと提携して開発した新しいFutureCardがあります。Futureはメリーランド州を拠点とするスタートアップで、ユーザーが購入した商品や支払額に基づいていかに気候変動対策にポジティブな貢献をしたかを評価してくれるFutureScoreをユーザーに提供しています。今では多くのブランドが二酸化炭素排出量などの環境負荷データをそれぞれ公開しているため、Futureではカード保持者による消費行動を通じて統合された最新情報を提供するためにアルゴリズムを随時更新しています。ユーザーは、このVisaと提携したFutureCard1枚を使って買い物をするだけで、自動的にFutureScoreが確認できます。さらにVisaは、環境負荷の低い公共交通機関、EV充電使用料、自転車・スクーター、古着・家具、肉・乳製品・卵の代替品である植物性の食品に対して5%のキャッシュバックを与え、地球のためになるグリーン消費を奨励しています。

photo credit: FutureScore

またMasterCardは2021年初旬に、スウェーデンのフィンテック企業であるDoconomyと共同で、独自の炭素計算機を発表しました。MasterCardはこのツールを使って、地方銀行が個人の二酸化炭素排出量を把握し、サステナブルな生活について学び、森林再生に貢献する方法を開発することを支援しています。MasterCardの「Priceless Planet Coalition」は、これまでに世界中で1億本以上の木を植えることに成功したキャンペーンの一例です。

カーボンニュートラルなカードをユーザーに提供しているMasterCardのブランド「Aspiration」でも、ウェブサイト上でサステナブルな注目ブランドを紹介しています。ユーザーはパートナー企業のオンラインショップで買い物をし、購買行動に応じて特典を得ることができます。消費者の利他主義への訴求は今に始まったことではありませんが、このようなブランドとのパートナーシップは環境に配慮した消費の必要性を単純明快に示しています。

photo credit: Aspiration

地球環境を最優先する若者世代に寄り添ったアプローチ

先日のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)やグラスゴー気候条約が話題になったように気候変動に敏感な消費者が増えている中、環境保全への取り組みは今や不可欠です。MasterCardが行った最近の調査によると、全世界の回答者の85%が、2021年には環境問題やサステナビリティの課題に対処するために個人レベルで行動を起こそうと考えています。そのような中で消費者が自身の与えうる環境負荷を正確かつ簡単に把握するための統合ツールを提供することは革新的なアプローチであると言えます。また、気候変動に配慮した金融商品はVisaとMastercardが差別化を図る上での最大の武器となる可能性があります。

目下、彼らの既得権益にとって最大の脅威の一つである仮想通貨は、マイニングと取引を処理するために莫大なエネルギーが必要になっています。現時点では、ビットコインはカーボンニュートラルの達成が厳しいと言われており、実際、ケンブリッジ大学の分析によると、ビットコインの採掘には年間121.36テラワット時が消費されています。これはアルゼンチン全体の電力消費量や、Google、Apple、Facebook、Microsoftの消費量を合わせたものよりも多いというから驚きです。一方、企業が気候変動対策のリーダーであることを求める消費者はますます増えており、特に、気候変動に敏感なZ世代の経済への参加が広がる今日、カーボンニュートラルや気候変動に配慮した製品開発に舵を切ることはVisaとMastercardにとって理にかなった戦略と言えます。

以下、EISの考察です

  • サステナブルな消費をしたいが、行動に移せない、何から始めればいいかわからないという人にとって、環境に配慮したブランドを紹介したり、自分の消費でどれだけカーボンニュートラルを実現できるかをきちんと説明し導いてくれる商品・サービスは魅力的であり、加えてCO2排出量の相殺をいかに見える化するかが鍵となる
  • サステナブルという言葉が流行語になり、個人として環境に配慮した生活をしなければならないという社会的プレッシャーを感じている人が多い。実際に日常生活の中でサステナブルな生活を送るためには、個人の努力と手間やお金がかかることも多いといった消費者のペインポイントに気付くことが新たなサービスを提供するために肝要である
  • 電気自動車を買える人が限られているように、本当の意味でのサステナブルな商品を開発するには、経済的状況にかかわらず誰もが普段の生活で簡単に取り入れられるアクセシビリティが重要になる。より多くの人が貢献できる仕組みを整えることで、結果として社会全体で気候変動にポジティブな影響を与えることとなる

参考文献

  1. TrendWatching
  2. Business Wire
  3. Columbia University
  4. PR Newswire
  5. FutureCard


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