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Victoria’s Secret Fashion Showが復活—多様性の裏側に見える「無意識の美の基準」

Victoria’s Secretのファッションショーは、1995年の初開催以来、華やかなランジェリーとトップモデルによるパフォーマンスで世界中の注目を集めてきた。しかし、2018年を最後に突如休止。2024年、6年ぶりの復活となり、多くのファンがその動向に目を向けている。

目次

なぜ休止を余儀なくされたのか

一世を風靡したショーが6年間も止まった背景には、「多様性の欠如」があった。かつてはスリムなスーパーモデルだけを起用し、非現実的な美しさが魅力の中心だったが、時代の変化とともに批判が増加。「自分が着る姿を想像できない」「細いモデルばかりで現実離れしている」という声に加え、「「より多くの顧客を獲得したいなら”リアル”に寄せないと共感が得られないのでは?」という意見が相次ぎ、結果としてショーの休止に追い込まれた。

2024年版ショーが描いた「多様性」とその課題

「多様性の欠如」との批判を受け、同じ批判を受けまいとVictria Secretは多様性にフォーカス、そして現代の潮流に合わせたファッションショーへ切り替えを図った。スリムなモデルだけでなく、プラスサイズモデル、多様な人種、初の日本人モデル、トランスジェンダーモデルも登場。筆者個人としては、視聴者からの意見をきちんと反映しており、十分に多様化されていると感じた。その一方で、ファンからは「プラスサイズモデルは体型カバーされている。期待はずれ」「スリムなモデルの方が美しい」「プラスサイズモデルの影響でショーの華やかさが半減した、残念すぎる。」といった厳しい批判も寄せられた。

特に注目すべきは、スリムなモデルが露出度の高い衣装を着る一方で、プラスサイズモデルの体型をカバーするデザインが多かった点。これは表面的には多様性を示しているものの、「細い=美しい」という基準が根強く残っていることが象徴されている。プラスサイズモデルの体型を”隠す”、つまりは誰しも無意識に「細い=美しい」と美の基準を定めてしまっているのではないか。

Victoria’s Secret Fashion Show 2024 プラスサイズモデルのメインステージ

SNS時代に浮き彫りになる「美の基準」

「美の基準」にまつわる問題は、SNSの時代にさらに顕著になっている。TikTokやInstagramでは、モデルやインフルエンサーの過去と現在の体型を比較する投稿が人気を集め、「痩せて美しくなった」というコメントが散見される。一見ポジティブに見えるこれらの意見も、「細い体型=美しさ」という価値観を強化する要因となっている。筆者自身も他人の体型について「細い」「痩せて可愛くなった」など、無意識に評価してしまうことがある。これもまた、我々の中に「美の基準」が植え付けられていることの表れである。

モデルの体型比較動画

Self Loveが浸透した現在、美の基準は改善されたのか

数年前から「美の基準」を問題視した若者や著名人は「Self Love(セルフラブ)」を訴えている。ありのままの自分を愛そうというムーブメントだ。しかし、皮肉なことにそもそも他人と自分の体型を比べなければ、「Self Love(セルフラブ)」を謳わなくとも、誰もが自分の体型を愛せるはずである。「Self Love」は多くのメディアでも取り上げられ、概念自体は浸透しつつある今日だが、人々の意識は本当に変化しているのか。

Doveが発行する美に関するレポート『The Real State of Beauty: A Global Report』によれば、20年という時間を経ても、社会が女性の美しさを捉える狭い基準は大きく変化していないと言える。アメリカ、ブラジル、フランス、イタリア、アルゼンチン、イギリス、カナダ、オランダの8カ国の女性を対象に『現代社会において女性の美しさの基準が非常に狭く定義されていると感じるか』という質問を行った結果、2004年と2024年を比較して最も減少したアメリカでも、わずか6%の減少にとどまっている。それどころか、オランダでは11%も増加しており、この問題に対する意識がむしろ高まる国も見られる。

どれだけ社会が美の基準を是正しようと努めても、なかなか人間の無意識の美の基準が改善されることは難しい。表面的には多様性が進んでいるが、本質的な多様性が生まれるのは何年後になるのだろうか。

以下、EISの考察です。

  • SNSや広告、メディアでは人気やエンゲージメントを重視するため、多様性よりも「視覚的に分かりやすい美」を優先しがちになる。ひいては、美の基準の改善はむずかしい。
  • 加えてAIの発展により、更に「美の基準」が狭まることが想定される。AIは既存のデータセットに依存して学習するため、過去の偏見(「細い=美しい」など)が組み込まれる可能性が高い。
  • 美の基準は、幼少期から周囲の環境やメディアを通じて潜在的に形成されるため、幼少期からの教育によってポジティブなインパクトを与えられる可能性は高い。

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