2021年10月9日、大型デパートや大規模な小売店に対して、性別に関係なくおもちゃやチャイルドケア用品を陳列することを義務付ける法律がカリフォルニア州で成立し、2024年に施行されることになりました。これは男の子・女の子用の売り場を禁止するものではなく、あくまでも子供たちが固定観念に捉われずに自由な選択ができるように、性別に捉われない=ジェンダーニュートラルのコーナーの併設を課すものです。時を同じくして、オランダ発ブロック玩具ブランドのLegoも社会的な男女差を、今後は商品から取り除くと発表しています。
性別を越えた平等な思想:ジェンダーニュートラル
ジェンダーニュートラルとは、性別を意味する「ジェンダー」と中立を意味する「ニュートラル」を組み合わせた言葉で、性別によって役割を区別することを避けるべきであるという考え方のことです。歴史的に見ても、男女間の格差・性差が政策、言語、社会的役割といった社会制度のあらゆる側面に見受けられますが、近年ではジェンダーニュートラルを実現するために、より包括的な言葉を使うなどして平等性を主張することが社会的にも重要視され推進されています。普段何気なく使っている英単語も、下図のように性別を示す言葉が含まれていることが多く、言い換え表現を知っておくことも現代教養の一つと言われています。
おもちゃ界で広がりを見せる、ジェンダーニュートラルの動き
カリフォルニア州はおもちゃ陳列に関するジェンダーニュートラルの法制化を行った米国初の行政になりましたが、この動きは今に始まったことではありません。
- 大手玩具量販店であるToys “R”Usは、2013年におもちゃに「男の子」「女の子」という表示を廃止、2015年にはオンラインストアからも性別による検索フィルターを削除
- 大型量販店であるTargetでは、2015年おもちゃ売り場などで性別に基づく表示を段階的に廃止すると発表
- バービー人形の生みの親であるMattelは、2019年にジェンダーニュートラルな見た目で着せ替えができるようにデザインされた、CreatableWorldラインをリリース
- ポテトヘッドで知られるHasbroは、今年に入り当キャラクターの商品名から「Mr.」を取り除き、ジェンダーニュートラル商品の発売も発表
無意識のうちに「男の子は車やヒーロー、女の子は人形やままごとで遊ぶもの」「青は男の子で、ピンクは女の子」といった固定観念が、我々の頭には刷り込まれています。しかし、大手玩具ブランドや量販店は近年のLGBTQムーヴメントや多様性の時代を反映し、ジェンダーニュートラルの実現にいち早く取り組んで来たと言えるでしょう。
ジェンダーにとらわれないファッションのあり方
ボイーズグループOne Directionのメンバーとして一世を風靡し、現在はソロアーティストとして活躍するHarry Styles。彼はレースのシャツやパールのジュエリーといったアイテムを巧みに取り入れた、ジェンダーレスファッションのポップアイコンとしてGenZを中心に絶大な人気があります。
先日パリで閉幕した2022年春夏のファッションウィークでも、多くのデザイナーが性別を越えたファッションのあり方を提案していました。個性を表現する手段であるファッションにおいても、性別問わずに誰もが着られるジェンダーニュートラルのアイテムがコレクションの一部にあるか否かが、ブランドの支持率を左右すると言っても過言ではないのかもしれません。ファッション界におけるジェンダーニュートラルというキーワードは、一過性のトレンドというより今後定着していくことが予想されます。
多様性の時代、ジェンダーニュートラルの思想を反映したサービスや商品が増え、社会的な仕組みが整っていけば、より包括的で公平な社会が実現するでしょう。この記事の中で取り上げた事例は一部でしかありませんが、「伝統的な性別」に捉われないジェンダーニュートラルという考えが、我々の社会にどのような影響を与え変化を生み出していくのか、これからも目が離せません。