2021年6月28日現在、これまでに成人人口の69.7%にあたる1億8000万人のアメリカ人が少なくとも1回のワクチン接種を受けており、内1億5400万人がワクチン接種を完了しています。(※1)EISが拠点を置くカリフォルニア州では、6月15日をもってマスク着用の義務やソーシャルディスタンシングといった行動制限と共に営業規制が緩和され、ついに経済の全面再開がされました。バイデン大統領が掲げていた「成人の7割が少なくとも1回の接種を受ける」という目標は、米独立記念日である7月4日までには残念ながら達成できそうにありませんが(※2)、それでも来月にはハワイを除くほぼすべての州で、通常通りの営業が行われると言われています。
<6月29日現在でリオープンしていない州>
- ワシントン州:16歳以上の州民の70%が少なくとも1回のワクチン接種を受けた場合(6/30予定)
- オレゴン州:18歳以上の州民の70%が少なくとも1回のワクチン接種を受けた場合(6/30予定)
- ニューメキシコ州:州民の60%が完全にワクチンの接種を完了(7/1予定)
- ハワイ州:居住者の70%が完全にワクチン接種を受けた
ただ、経済活動の全面再開がされている州でも、オレンジで色付けされた州ではワクチンを打っていない人にマスクの着用を義務付けています。例えば、カリフォルニアでは10月1日までワクチンを接種していない人には屋内でのマスク着用が義務付けられ、大規模な屋内イベントでは、ワクチン接種の証明または陰性反応の証明が求められます。
とは言え、このようなサインがあるレストランやショッピングモールといった屋内施設に入る際、わざわざワクチン証明書を提示するわけではないため、マスク着用はあくまでも個人の判断に委ねられることになります。病院や公共施設、または個人経営のビジネスでは依然として「マスク不着用の場合は入店お断り」といったサインを見かける場合もありますが、少なくともロサンゼルスではコロナ前の生活が随分と戻ってきているという印象です。
コロナ前のような生活にはいつ戻れるのか?
パンデミックを食い止めるためには、世界全体で免疫力向上をする必要があります。米国感染症対策の最高責任者であるアンソニー・ファウチ氏は、人口の70〜85%にワクチンを接種すれば通常の生活に戻れると述べています。現在、アメリカのワクチン接種率は1日平均76万3793回。このペースは徐々に低下傾向にあり、全人口の75%をカバーするには、さらに7カ月かかると言われています。(※1)アメリカではリオープンによって長い自宅待機や自粛生活がようやく終わり、パンデミックで失われた時間を取り戻すかのようにリベンジ消費をする人が増えています。外出や出勤の頻度も増えるにつれて、これまでリモートワークのお供だったスウェットパンツを脱ぎ捨て、華やかに着飾りたい!とワードローブを一新する人が全米で増えているようです。GQによると、北米でのブランド全体の売上が46%増加したと報告し、エルメスもアメリカでの売上が23%増加したと報告されています。また現在、アメリカ人旅行者の10人に9人が今後6ヶ月以内に旅行を予定していて(※3)、観光関連産業への消費は右肩上がりです。コロナ前のような生活に完全に戻れるのは少し時間がかかるかもしれませんが、独立記念日や夏休みを目前にアメリカは開放感と希望に満ち溢れています。
一方で、以前のEIS Insightでも紹介した労働不足や消耗品の高騰など、レストランやホテルといったホスピタリティビジネスやサービス業では、需要と供給が追いついていないのも現状です。このような需要と供給のアンバランスはアメリカだけに限らず、世界中でワクチン接種が進み人々が国境を越えて行き来するにつれて、今後問題が大きくなるかもしれません。今回は、アメリカの経済再開の様子を写真と共に紹介しましたが、日本でもワクチン供給が迅速に進み、少しでも早く規制緩和がされるように願っています。
Reference
- Bloomberg : Covid-19 Tracker
- The New York Times
- US Travel
- GQ