コロナ禍における北米EC市場が年率で約35%成長する中、「ハイパーローカル」(超地元、超地域密着という意味)に焦点を当てたビジネスが驚異的な成長を示しています。ハイパーローカル・ビジネスとは、消費者の地元にある店舗、レストラン、モール、その他の商品やサービスの提供者を対象とします。それら事業者をYelp、Instacart、DoorDash、Uber Eatsなどが支え、2019年では1,320億ドルだった北米ハイパーローカル・ビジネスの市場規模は、2027年には3,634億ドルとなり、年平均成長率(CAGR)は17.9%を示すと予想されます。
ハイパーローカル・ビジネスを後押しする要因
- 地元での消費を望む消費者心理
「地元コミュニティに貢献したい」、「生産者/提供者を知った上で購入したい」、「より新鮮でユニークな商品を選びたい」と考える消費者の増大。
- ライフスタイルの変化
インターネットやスマートフォンの普及、都市化、コロナ禍での新生活習慣がもたらす人々の行動様式の変化。
- オムニチャネルという新たな購買スタイル
SNSでウィンドーショッピングをして、地元店舗からモノやサービスを買う新たな購買パターンの普及。化粧品・スキンケアの新鋭専門店Sephoraは、各店舗が店舗近辺に住むユーザーに対して個別の限定プロモーションをテキストメッセージすることにより、各店舗の売上増大とファン獲得を実現。
- 即日配送サービスの広がり
DoorDashとMcDonald’s、Uber EatsとRiteAid、InstacartとWallmartなど、即日配送サービス提供者と既存大手企業との提携、また物流大手UPSのスタートアップ買収などにより、即日配送がECの不可欠サービスとして定着。
ハイパーローカル・ビジネスに最適なビジネスカテゴリー
- 日用消費財(MCG/CPG)
今すぐに必要とする日用品や消費財
- アパレルおよびアクセサリー類
記念日に向けてのパーソナライズしたプロモーションなどにより、期日が差し迫るなかでの購買意欲を駆り立てる商材
- 食品や飲料
信頼できる提供者からのオーガニックや新鮮な食品や飲料
- 健康、美容およびパーソナルケア
ユーザーの興味や関心をくすぐる提案や実際に経験する場を提供することにより、その場で欲しくなる商材
- オンデマンドでのニーズがあるサービス
各種修理、クリーニング、マッサージ、お弁当やレストラン・デリバリーなど
以下、EISの考察です。
- ハイパーローカルでのビジネス展開は、米国での事業展開を進める上で、特定の商材に限らず、顧客との近接性を武器とする有効なマーケティング手法となる
- 特に国際的知名度と規模の経済で競争優位性を有するAmazonや競合ブランドとの差別化に取り組む上で、小が大を食う、数少ない戦略オプションである
- そのために、自社がターゲットとするユーザー・データ、地理的特性、市場環境等を把握した上でのハイパーローカル戦略を考案することが肝要
- その上で、リアルタイムでの「スピード配送」、「オムニチャネル経験」、「受発注、決済システム」、「データ分析」、「トラッキング」、「顧客サポート」など、自社商材に最適な機能の実装がカギとなる
参考文献