このインサイトについて、さらに詳しく動画で解説しています(20:20)
皆さんはメタバース(Metaverse)という言葉をご存知でしょうか。「インターネット上の巨大な仮想空間」を意味する言葉ですが、語源は1992年にニール・スティーヴンスンが発表したSF小説「Snow Crash」の中に登場した仮想空間にまでさかのぼり、30年の時を経てその世界観が現実になりつつあるいま、大きな脚光を浴びています。またFacebookのマーク・ザッカーバーグも同社をメタバース企業へと変革していくと決算説明会で話など、複数のテック企業も今後の重要戦略に位置付けている次世代のフロンティアといえます。
メタバースとはなにか
メタバースの概念を定義するならば
- インターネット上にある複数の仮想空間をひとまとまりとする宇宙のようなもので、
- 人々は自身の分身であるアバターを通じてそれぞれの仮想空間の間を自由に行き来し
- 現実世界と同じように行動、体験ができる
世界です。キーワードは「複数の仮想空間」、「自由に行き来する」、「現実世界と同じように行動」という3点でしょうか。
仮想空間といえば、例えば3億5000万人の月間利用者数を誇るFortniteや、約2億人が利用するRobloxなどに代表されるオンライン3Dゲームが思い浮かびますが、これらはまだメタバースの前身です。これらのゲームではユーザー自身がUGC(User-generated content)と呼ばれる独自コンテンツを生み出しそれを売り買いしたり、チャットを通じて友人たちとのコミュニケーションを楽しんだり、人気ミュージシャンのライブに参加したりなど、ゲームを超えたバーチャルライフとして人々を惹きつけています。しかし、ユーザーがそれぞれの世界を自由に行き来したり、ある世界で手に入れたグッズを別の世界にも持っていくなどといったメタバースの重要な概念がまだ実現できていません。一方で、オンライン3Dゲームはすでに1つの国の人口以上のプレイヤー数を抱えていますし、これらの世界の中でアバターが身につける「スキン」と呼ばれるデジタルグッズなどの売上高は2022年には500億ドル(約5.5兆円)に達すると予想される巨大な市場を形成しており、今後人々の消費がリアルからバーチャルにシフトする可能性は十分に予見されます。すでにLouis VuittonやGucci、Nikeといったトップブランドがゲーム内で使用できるデジタルアイテムを販売したり、ゲーム用にデザインした商品やゲームの世界観を表現した商品を現実世界でも販売するなどのマーケティングを展開しています。
仮想空間での新たなビジネスチャンス
メタバース上での新たなビジネス機会を狙うスタートアップの動きも活発化しています。例えばスウェーデンのAdvertyはゲーム等の仮想空間内に広告を表示するバーチャル広告代理店ビジネスを展開しており、マクドナルドやコカ・コーラ、レノボなどの大手企業が同社のサービスを利用しています。今後、テレビ、ラジオ、雑誌といった従来の広告チャネルが衰退していく中、仮想空間を舞台にした新規ビジネスの機会も広がってくることが予想されます。
以下、EISの考察です。
- オンラインゲームなどの仮想空間で時間を過ごす人の数は劇的に増加しており、現実世界とは別のもう一つの世界=メタバースは新たなフロンティアとして拡大を続ける
- 今後、メタバースが拡大し、できることの自由度が広がっていくにつれて、仮想空間の中で物やサービスを提供したり、マーケティングを行うことの重要性が増してくる。→ 裏を返せば、仮想空間でのビジネスを軽視すると、人々が仮想空間にいる間一切リーチできなくなり大きな機会損失となる可能性もあるため、この分野の動向には常に目を光らせておくべき
- メタバースは新たなビジネスモデルのゆりかごでもある。メタバース上で新たに生まれる技術やビジネスを自社の事業アイディアのヒントにしていくことが重要