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2020年5月、アメリカはSpace X社のFalcon 9により9年ぶりに有人ロケットの打ち上げに成功し、国民の宇宙開発への注目は大きく高まりました。また、時を同じくして、SPAC(Special Purpose Acquisition Company: 特別買収目的会社)ブーム(※1)が生まれ、宇宙関連企業が続々とSPACとの合併による上場計画を発表してきました。2010年に25兆円ほどであった世界の宇宙産業は2019年には40兆円ほどにまで成長し、早ければ2030年代には100兆円の大台に乗ると予想されています。
宇宙産業と一口に言っても、注目されている分野は多岐に渡ります。中でも、成長が期待されている分野は衛星通信や衛星から観測されるデータの提供といった衛星サービス分野で、全体の4割程度を占めています。また、衛星サービスを提供するために必要な衛星を打ち上げるためのロケット事業や衛星を軌道に投入するためのサービスでも新興企業が続々と誕生しています。
宇宙産業は技術開発に時間とコストがかかるため、各国政府による国策事業として育てるか、億万長者が自らの資産を用いて取り組むというのがこれまでの傾向でした。また、新規上場による大型資金調達を行いたくとも、まだ利益が出ていない、あるいは製品ですら開発途上にあるといった企業の場合、従来のIPOはかなりハードルの高いものでした。そこに、2020年大きなブームとなったSPACが目をつけ、昨年後半から続々と宇宙関連企業がSPACを通じた上場と資金調達を目指しています。今後これらの企業が上場に伴う資金調達に成功すれば、さらなる技術開発が進み市場の拡大ペースも早まるのではと予想されます。
2020年10月から2021年3月にかけてSPAC上場を発表した主な宇宙関連企業(※2)
また、シード期、アーリーステージのスタートアップを支援するエコシステムも確実に成長しています。世界8拠点で展開し弊社もパートナーシップを結ぶStarburst Aerospaceは2012年の創業以来、航空・宇宙・防衛産業に特化したインキュベーター・アクセラレーターとして60以上の政府機関やグローバル企業と多くのスタートアップ企業を支援してきました。日本企業ではパナソニックがアクセラレータープログラムに参加しています。現在上場を目指している衛星軌道投入サービスのMomentusはStarburstのポートフォリオ企業でもあります。
以下、EISの考察です
- シード期から上場までのエコシステムが完成しつつある宇宙産業は、今後飛躍的な成長を遂げる可能性が高い
- 宇宙産業は先端技術の集積であり、そこで生まれた新技術はデュアルユースとして他業界へ転用されていく。また、衛星から得られる情報を用いた新たなサービスモデルが誕生する可能性が高いため、常にウォッチしておくべき
参考文献