このインサイトについて、さらに詳しく動画で解説しています(13:25)
アメリカで、ファンとの新たなコミュニケーション・プラットフォームとして「Community」というサービスが注目を集めています。SMS(Short Message Service。日本で言うショートメール)でテキストを一斉送信したり、個別に1対1でのやり取りができるというものです。
SMS配信サービスは以前からありましたが、2019年7月にロサンゼルスのサンタモニカでスタートした「Community」が特に注目されたのは、多くの著名人たちがTwitterやTVで「私の番号XXX-XXX-XXXXにテキストして」と告知し、話題になったことがきっかけです。
情報を発信する側(リーダー)がCommunityで専用の電話番号を取得。情報を受信したい側(メンバー)がその番号にテキストメッセージを送信し、案内に従って登録手続きを行います。専用アプリはなく、以降はSMSを介してコミュニケーションが行われます。
InstagramやFacebookのようなSNS上のコミュニケーションは「1対N」でオープンに行われるものの、SNSプラットフォーム側のアルゴリズムにより、全投稿が全フォロワーに表示されるわけではありません。
一方Communityでのコミュニケーションはクローズドに行われ、UI上「1対1」でのやり取りに見えるため、ユーザー側により親近感を与えます。全登録メンバーや年齢・性別・エリアなどの条件で絞ったサブグループへの一斉送信はもちろん、特定の個人のみに送信することも可能です。配信したテキストは全配信先に届き、受信したメンバーは返信も可能です。
収益モデルもSNSが広告モデルであるのに対し、Communityはリーダー側がメンバー規模に応じて月額料金(メンバー1000人まで$99/月)を支払う仕組みで、メンバー側に広告が表示されることはありません。Communityによると、メッセージの開封率は95%、クリック率は59%、返信率は39%だそうで、一般的に言われているEメール・マーケティングでの開封率20〜25%に対し、驚異的な高さとなっています。
Communityは2021年4月、Salesforce Venturesから4000万ドルの資金調達に成功。これまでのLiveNation EntertainmentやSony Innovation Fundなどからの出資を含め、計9000万ドルを調達したことになります。WSJの記事によると、Cookie使用に対する規制の強化など、デジタル広告のターゲティングが困難になり、新たなコミュニケーション・プラットフォームへの期待が高まっているようです。
Communityを使ってドクターとやり取りをしているEISスタッフによると「セルフ・ヒーリングに関するTipsが届いたり、ポッドキャストの告知が届くが、売り込みをされることはない。親密で心地よく、本質的なコミュニケーションだと感じる。」とのこと。新しいコミュニティの姿がここにあるのかもしれません。
以下、EISの考察です
- SNSのトレンドは激しく、SNS上で築いたコミュニティは永続的ではない。また昨今の個人情報の取り扱いやCookie使用に対する規制の強化により、ビジネスにとって、SNSに依存せず、直接顧客とつながるコミュニケーション手段を構築することは急務である。
- 今までのオープンで煩雑なコミュニティではなく、ビジネスと顧客が本質的な関係を築ける”新しいコミュニティ”の在り方が求められていく。
参考文献
- Wall Street Journal
- Photo credit: Community