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急速な拡大が期待されるフェムテック業界

このインサイトについて、さらに詳しく動画で解説しています(13:39)

全米の女性は医療費に年間5,000億ドルを費やしています。この大きな市場で、Femtech(フェムテック=FemaleとTechnologyを合わせた造語)業界の急激な拡大が期待されています。フェムテックとは女性特有の健康や医療の課題を解決するためのソフトウェアやテクノロジー製品及び、サービスを指します。2019年、フェムテック業界は世界で8.2億ドルを売り上げ、5.9億ドルのベンチャーキャピタル投資を受けました。まだまだ医療業界において小さな分野ではありますが、PitchBookは、今後2030年までに、業界は30億ドルの売り上げを記録すると予測しています。女性特有のガンの予防や更年期障害の改善、不妊治療、妊娠の管理、生理周期の予測など様々な分野で、アプリやテクノロジーのスタートアップが開発を競っています。

イスラエルに拠点を置くスタートアップMobileODTは、スマートフォンとAIを駆使して子宮頸ガンを検査・発見できるデバイスEVA Systemsを開発しました。このポータブルデバイスはスマートフォンより少し大きいサイズで、1メートルほど離れた距離から子宮頚部の映像を撮影し、スマートフォンを介してクラウドに送信された情報がAIで分析され、1分以内にガン細胞やガンの前段階である異形成細胞を検知できる機能を搭載しています。専門の産婦人科医や医師以外の医療従事者も使用することができ、AIは専門医と同等の正確さでガンを診断することができます。WHO(世界保健機関)は子宮頸ガンのない世界を目指し、2030年までに子宮頸ガンの死亡率の30%減少を目標としたプログラムを実施しています。すでに20ヵ国で使用されているこのデバイスは、今後さらに市場の拡大を期待されています。

医師以外の医療従事者がポータブルで利用でき、AIが1分以内に正確な分析を行い、WiFiで送信された結果をオンライン医療に活かせるデバイスは、これからの遠隔医療での活躍が期待される

ようやく日本でも政府による不妊治療の支援の拡充が始まりましたが、世界のスタートアップも新たなテクノロジーを開発しています。ロンドンのスタートアップBéa Fertilityは、世界初の家庭で使える不妊治療キットを開発しました。例えばイギリスでは、7組に1組のカップルが不妊に悩んでおり、世界でも高額の医療費や、頻繁に病院に通わなければいけない不便さ、体への負担などから望ましい不妊治療を受けられないカップルがたくさんいると言われています。Béa Fertilityはサブスクリプションにより、毎月約400ドルの購読料で、ICI(子宮頸管内精液注入法)を自宅で行えるキットと、排卵及び妊娠テスト、プロセスを管理できるアプリを提供します。3か月の利用で妊娠率の40%アップ、6か月で60%アップが証明されています。

従来の方法よりも低価格で利用しやすい不妊治療キットは、今年後半に発売される予定

更年期障害の女性の大きな悩みのひとつは、突然のほてり。この問題を解決するウェアラブルデバイス、Wave 2をEmbrLabsが発売しました。手首につけるこのデバイスはスマートフォン上のアプリと連携しており、アプリ上の冷却ボタンを操作すればデバイスが触れている手首の内側の肌の温度を下げる働きをし、逆にアプリ上の加温ボタンを操作すれば肌の温度を上げる働きが起きます。この反応が脳神経に伝わり、体感温度を調整するシグナルが自然におきて、ほてりや冷えを解消することができるのです。さらにシグナルは、脳内で感情やストレス管理や喜びを司るエリアにもアクセスするため、不眠やストレス、鬱などへの効果も挙げられています。アプリは体調のトラッキング機能や、ユーザーコミュニティとのインタラクションも提供しており、更年期障害に悩む女性たちのQoLを高めています。

自分の体温を調整するデバイスは、体感温度が異なる人と一緒に過ごす屋内や、温度調整ができない屋外で瞬時に快適な体温に調整し、身体と心のバランスを保つ
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以下、EISの考察です

  • パンデミック下でのオンライン医療の急速な拡大に伴い、女性医療という大きな市場を支えるフェムテック業界は、今後、オンライン医療の一角を担う分野として発展していく。
  • 晩婚化、少子化が懸念される社会で、より効率的でアクセスがしやすい不妊治療のテクノロジーやサービスは必要不可欠なものとなっていく。
  • 更年期を迎えた女性のQoLの向上は、前世代より社会での役割が増えた女性たちにとって大きなニーズであり、コミュニティとして女性を支えるフェムテックの躍進が待たれている。
  • #MeToo運動やその他の動きに後押しされ、今後10-15年で女性経営者、エンジニア、投資家が増えることが予測される。女性のニーズに注目したフェムテック業界は劇的な変化を迎える。

参考文献

  1. PitchBook
  2. MobileODT
  3. WHO
  4. HealthTechDigital
  5. FemTech Insider
  6. Photo credit: MobileODT, HealthTechDigital, FemTech Insider

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