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アフリカ農村部のモビリティを向上するためには

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アフリカ農村部ではモビリティの発達が長年の課題となっています。

現在、4億5000万人かつ農村人口の70%以上がモビリティへのアクセスを欠いており、その主な原因はインフラや交通システムの欠如にあると考えられています。

この問題はアフリカの農業部門かつ経済全般に大きな影響を与えています。例えば、ジンバブエでは人口の70%が農業に従事し、国のGDPの15〜20%を生み出しています。従って、アフリカ農村部でのモビリティを改善することは、アフリカの経済発展を達成するための重要な一歩であるといっても過言ではありません。

しかし、アフリカ農村部のモビリティを発達させるには以下の問題に取り組む必要があります。

Image Credit: Kisii Smart Community
  1. 経済の持続的成長を可能にするために二酸化炭素のゼロ・エミッションの実現
  2. 農村部の「実際」の需要を実現するための適切な技術とビジネスモデルの導入
  3. 農村部でのモビリティ事業への参入は、交通アクセスかつ経済的ピラミッドの底辺層への対応を意味するため、利用者が負担するコスト削減の実現

しかし幸いなことに、これらの問題に取り組むための新しい技術や解決策が近年登場しつつあります。

1. テクノロジーと統合された電気モビリティ(EV)

EVが有力な解決策となるのは、次の二つの理由に基づいています。

第一に、EVは農村部モビリティの改善をゼロ・エミッションで達成できます。EVの動力を太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーで発電することで、内燃機関(ICE)車と比較して、ほぼ0の二酸化炭素排出量で走行することができます。すなわち、EVによってアフリカ経済を持続的に発展させることができると考えられます。

第二に、アフリカでの最近の傾向と規制の変化は、EVの発展に追い風を吹かせていると推測できます。Africa E-Mobility Alliance(AfEMA)は、2030年までにアフリカで販売される全車両の30%がゼロ・エミッション車になると述べています。さらに、税制の変更により、他の自動車よりも電気モビリティを選択するインセンティブが生じています。2023年現在、いくつかの政府は電気モビリティに対する付加価値税(VAT)と物品税を引き下げており、タンザニアのように最高44%の物品税を廃止した国もあります(下記参照)。

Image Credit: Africa E-Mobility Alliance

2. カーボンクレジット(温室効果ガス排出権)を初期費用の調達手段としての利用

カーボンクレジットは二酸化炭素排出量1トンの削減・除去を表す単位を指します。これらのクレジットは、排出削減プロジェクトを通じて、通常排出するはずであった二酸化炭素の排出量と比べ削減できた排出量の差を獲得する事ができます。排出削減プロジェクトに投資することにより、企業はカーボンクレジットを得る事ができ、カーボンクレジット市場で排出権を売却することができます。カーボンクレジットは、事業運営に必要な資本の取得・維持コストの資金調達手段として利用することができます。

カーボンクレジットの価格は、ここ数年で大幅に高騰していることが確認されています(下記参照)。これにより、排出削減プロジェクトへの投資や、その収益を事業発展のための資金として活用することの重要性が高まる事が期待されます。

Image Credit: carboncredits.com
目次

農村部モビリティ向上に取り組んでいる企業の例

Ox Delivers

Ox Delivers社は2020年に設立された英国系ルワンダの企業です。

アフリカのトラックの現状を見ると、ほとんどのトラックが中古の状態で輸入されています。しかし、アフリカの整備されていない悪路、高価な燃料費かつ中古であるための高価な保守費用がかかることがトラックの信頼性に問題を生じていました。この現状を見たOx Delivers社は、高運搬能力、高耐久性、全地形対応能力、低コスト製造、トラックの簡易輸送が可能な電気トラックを開発しました。

同社は、自社のトラックを利用したオンデマンド物流サービス(利用者の要求に応じて物流サービスを提供する)の需要に応えるために配車担当者、ドライバーと顧客のためのデジタルプラットフォームを開発しました。

このデジタルプラットフォームはルワンダの現状に特化しています。顧客が使用するアプ

リはルワンダの80%の人々がアクセスできる2Gフィーチャーフォン(スマートフォンとは異なる)で使用できるように開発されています。

ルワンダの農村部の需要に合ったサービスに対して技術とEVを導入した結果、Ox Delivers社はサービス開始以来、前月比40%の成長を達成し続けています。

Image Credit: Ox Delivers

Mobility for Africa (MFA)

MFA社は2018年に設立され、現在ジンバブエで活動しています。

MFA社は一般の人々、特に農村部の女性達に電気モビリティ革命を起こそうと目標にしています。この背景には農村部の女性達が家庭のために水や燃料を長距離徒歩で運ぶ莫大な負担を強いられて事情があります。また、今までモビリティの障壁があった農村部の農家の方々がMFA社の手助けにより市場へのアクセスを容易にする事を目指しています。

MFA社は電動三輪車、独立した充電ステーションかつバッテリー交換サービスを用いてジンバブエの農村部に革命的なビジネスモデルを構築しています。同社は三輪車を運転できる女性達を訓練させ、電動三輪車を組立かつ修理できるように技術者を養成しました。このような取り組みがあったからこそ、MFA社は電動三輪車を小規模農家向け (B2C), サービス提供向け(B2G)、農業ビジネス向け(B2B)といったような多岐なビジネスを発展する事ができました。

これらのビジネスモデルを構築したMFA社は標準化された、複製可能な、拡張性のある包括化されたモビリティソリューションをアフリカ農村部全体に提供する事が可能になると考えられます。

Image Credit: Mobility for Africa

Kisii Smart Community (KSC)

KSC社はトヨタ・モビリティ基金の支援により2020年に設立されたケニアの企業です。現在ケニア西部のキシイ郡にて事業を展開しています。

KSC社はモビリティ、集落内の接続性、持続可能なエネルギーのアクセスを改善する事により、農村部の生活水準と商品・サービスのアクセスを向上させ、ケニアの持続的可能な発展を目指しています。

同社は電動三輪車、リサイクル可能なバッテリーと独立した電力発電インフラ(Agr-E-Hubs)を通して小規模農家が面しているファーストマイルとラストワンマイルの物流問題に取り組んでいます。

物流サービス(kg*km単位で測られる) のコストを下げるため、KSC社はICTとジオローケーション (地理的位置情報の検出技術)を統合したデジタル技術を活用し、全ての資産 (EV、バッテリー、充電ステーションなど)を最適に利用できるように提案します。同社の物流プラットフォームは乳製品、バナナ、アボカドなどの地域のバリューチェーンに組み込まれています。地域のバリューチェーンに組み込む事で、EVが有用的に活用され、継続的に収益をあげる事ができ、結果的に同社のビジネスモデルの持続的可能性を見出す事ができます。

物流にとどまらず、KSC社は農家の起業家精神を育むための訓練・教育サービスや、バリューチェーンの強化と地域コミュニティの発展をするためにその他のサービスも提供しています。これには農作物の加工、冷蔵、乾燥、熟成(バナナ)などが含まれます。

農村部の地域コミュニティとバリューチェーンのKSC社のモデルの参入障壁をさらに低減するために、同社は現在、充電インフラの初期費用とEVの継続的な運用・保守費用を相殺するカーボンクレジットの活用に取り組んでいます。EVを活用することによって削減される二酸化炭素の排出量(内燃機関車比)を実証することにより、KSC社はカーボンクレジットを得る事ができ、自主的炭素市場で排出権を売却することができます。これらのクレジットは、KSC社のビジネスモデルをより迅速に拡大するために重要な財源になり得ます。

同社はこのビジネスモデルをアフリカ全土に拡大することを目指しています。このモデルはアフリカ農村部のモビリティの発展を経済的に持続可能な方法で実現する方法の見本となる可能性があります。

Image Credit: Kisii Smart Community

以下、EISの考察です

アフリカ農村部のモビリティの発展は、アフリカ経済の発展にとって非常に重要な問題であります。しかし、これらを達成するための障壁はゼロ・エミッションの達成、効果的な技術・ビジネスモデルの構築、コストの削減であると考えられます。

Ox Delivers社、Mobility for Africa社、Kisii Smart Community社のような企業が、EVの配備、現地の需要に適している技術・ビジネスモデルの開発と実行、カーボンクレジットによる負担コストの削減を通して、アフリカ農村部のモビリティ発展に取り組んでいるのを見る事ができます。

EVは世界的に大きな成長を遂げており、その上で技術の発展は数十年で凄まじい進化を見せています。更に、持続可能な社会に対する人々の関心も年々高まっています。このようなトレンドを背景に革新的なビジネスが開発されれば、アフリカ農村部のモビリティ問題が解決され、世界全体で経済的発展を達成できる未来が見えてくるかもしれません。

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