2023年は生成AI定着の年になりました。ChatGPTのユーザーが史上最速で1億人に達成し、生成AIに関するエコシステムも大きく発展しました。
2024年も生成AIが中心になると予想されます。本記事ではGartnerやDeloitteが発表したテクノロジートレンドや、CESなどを元に、EISの注目トレンドを述べていきます。
AIの利用は基礎となる
Gartnerが発表したTop Strategic Technology Trendsで10分野中7分野にて生成AIまたはAIに直接言及しています。
AIに言及している分野は以下の通りです。
1. AI Trust, Risk and Security Management (AI TRiSM)「AIの信頼性/リスク/セキュリティ・マネジメント」
3. Sustainable Technology「持続可能なテクノロジ」
4. Platform Engineering「プラットフォーム・エンジニアリング」
先進的なテクノロジを活用したプラットフォームにより、アプリケーションのより迅速なデリバリとビジネス価値の創出を可能にする革新的な手法のこと(Gartner)
5. AI-Augmented Development「AI拡張型開発」
生成AIや機械学習などのAI技術を利用して、ソフトウェアエンジニアが行うアプリケーションの設計、コーディング、テストを支援すること(Gartner)
7. Intelligent Applications「インテリジェント・アプリケーション」
インテリジェンスを機能として備えている(Gartnerはインテリジェンスを、「学習により、適切かつ自律的に対応できるように適応すること」と定義している(Gartner)
8. Democratized Generative AI「ジェネレーティブAIの民主化」
10. Machine Customers「マシン・カスタマー」
支払いと引き換えに商品やサービスを得る人間以外の経済主体 (Gartner)
上記の一例では、2027年までにプロの開発者の70%がAIを活用したコーディングツールを使用するようになり、現在の10%未満から増加する予測が立てられています。DeloitteもIntroductionで生成AIについて言及しており、新規ビジネスはAIありきとなりえます。
実態としての生成AIを用いた取り組みは現ソリューションへの組み込みとなる
実際にはどのような利用方法があるのでしょうか。企業は現在のプロダクト・ソリューションに組み込んで提供されることが益々増えていくものと思われます。
2024年1月9日〜12日にロサンゼルスで行われたComputer Electronics Show(CES)では生成AIについて多くの発表がありました。そのうち自動車業界の事例を紹介いたします。
BMW、Volkswagen、メルセデスは生成AIを用いた車載アシスタントを発表しました。BMWはAmazonのAlexa LLM、VolkswagenやメルセデスはChatGPTを利用しています。車載アシスタントに生成AIを用いることにより、ユーザーと会話するような形式でドライブ・モードの変更や、最新のニュースを流す、音声通話の発信、車内の照明、サウンドのボリューム調整等ができるようになります。
自動車サプライヤーも音声アシスタント開発に参入しており、BoschはGoogle LLMを使用した車載AIアシスタントの「BoschBot」を開発中です。ContinentalもGoogle Cloudを活用して音声アシスタントを搭載する車載端末の開発を進めています。
これらが示すことは、自動車メーカーがAmazonやGoogle、Microsoft等の大手プラットフォーマーと提携して生成AIのサービスを展開するようになっていることです。CESではAWSがブースを出しており、大手プラットフォーマーが事業者との連携をより積極的に求めていくものと思われます。
これまで以上にリスク・コンプライアンス対応が重要になる
生成AIという光が大きくなれば、その利用方法・データの著作権等が課題に浮かび上がります。このリスク・コンプライアンス対応では、GartnerではAI Trust, Risk and Security Management (AI TRiSM)、デロイトはDefending reality: Truth in an age of synthetic mediaで言及しています。
一例を挙げます。パルワールドという直近リリースされたゲームです。
日本のスタートアップが、ゲーム会社から断られ続けてきた企画を、自力で少ないリソースをやりくりし、生成AIを用いて企画・デザイン・開発し、Steamというデスクトップゲームプラットフォームで1月24日にリリースしたゲームです。反響がすさまじく、リリース後5日間で800万ダウンロードを達成、Steamでの同時接続数が185万人と歴代2位の記録を出しています。ここまでだと成功ストーリーとなるのですが、問題となるのは、生成AIを用いて作成されたゲームのキャラクターがポケモンと類似しているように見えるため、模倣疑惑が発生し、一部のポケモンファンからの脅迫も発生している点です。
本事例の結論は今後を見守るしかありませんが、生成AIを用いることで、限られたリソースで素早くサービスをリリースすることができますが、実際のサービスリリース後でもリスク・コンプライアンス対応が求められます。