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ついに世界へ飛躍する日本映画

今年もホリデーシーズンがやってきました。世界一を誇る大手、AMCシアターでは今期なんと「ゴジラ-1.0」、「君たちはどう生きるか」と日本映画が二本同時に売り上げのトップに立ちました。ジブリの新作が上映された12月第二週には日本映画のボックス売り上げが北米でそれぞれ一位と三位でした。日本ならではの丁寧なストーリーライン、繊細で控えめな描写は英語圏の観客をも魅了した証でもあります。LAのシアターでは日本語の台詞を聴きながら懸命に字幕を読んで映画を楽しんでいるアメリカ人の観客が、映画の一瞬一瞬に反応していました。時には笑い、涙し、緊張感に包まれ館内静かになるシーンも見られました。外国語の映画をハイシーズンに取り入れること自体珍しい北米において、これはなんとも興味深い現象です。

二作品とも15M米ドル(21億円)以下という限られた予算の中で作成され、オープニング興行収入を制作費用に対する回収率に換算すると「ゴジラ」は76%、「そして君たちはどう生きるか」は130%でした。上演一週間以内で制作費を回収でき流のは、桁違いな制作費をもつハリウッド映画と比べてと驚異的な回収率であり、2023年総合で見ても宣伝費用だけで150M米ドル(210億円)、制作費の1.5倍もかけたと話題の「Barbie」しか超えられなかった指標です。一週目の成績と制作費用を比べると同年のDisneyが250M米ドル(354億円)注ぎ込んだ「The Little Mermaid」は38%、 制作費が220M米ドル(312億円)の「The Marvels」は21%と、それぞれにかけれらた140M(198億円)と356M(505億円)の宣伝費用も考慮に入れてみるとDisney だけではなく北米市場にとっても苦しい一年となったことが分かります。

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北米市場でますます流行する日本文化

さらに今年のエンタメニュースを振り返ると、ついに日本発の題材も英語ドラマとして高額の映像化が進められた年でもありました。今年NETFLIXから配信された「ワンピース」実写版はエピソードごとの制作費用がHBO社の「ゲーム・オブ・スローンズ」 を3M米ドル(4.3億円)も上回る18M米ドル(26億円)にも登り、世界で最も高価なショーの一つとしてLAでも大いに話題となりました。世界的に評価の高い漫画やアニメを誇ってきた日本は未だかつてこの桁の実写化はしたことはありませんでした。NETFLIXが一見冒険に出たかのようにも見えるが、商業価値世界ーの漫画「ワンピース」はフランチャイズ価値20.515 B米ドル(2.9兆円)と、世界史上メディアフランチャイズランキングの第20位、凄まじい商業価値がバックについています。

このランキングを見ると上位25以内に日本からはマリオやドラゴンボールを含め6つもランクインしています。こう見る、北米市場が日本メディアに傾くのは今に始まったことではなく、アメリカでもミレニアル とZ世代を中心に日本のアニメ文化に対しては特に需要が上昇し続けてきた結果でもあります。ちなみに欧米由来の上位ランクにはハリーポッターやバットマンなどほぼ全て莫大な制作費で実写化済みですが、日本ではまだオリジナルの商業価値に匹敵できる実写を撮る予算が集まりません。需要と供給の量を分析すればNETFLIXのように長年人気を培ってきたものに資金投入するのが実は理にかなっています。結果としてこのドラマは84カ国において最も鑑賞量が多い作品となり、発信が開始された第三の四半期を見るとNETFLIXの利用者数が900万人も増えました。

映画不足のハリウッド

2023年は北米映画界にとって極寒な一年となりました。パンデミックからの回復を果たす前に今年アメリカではストライキも多発しました。WGA(全米脚本家組合)と SAG-AFTRA(全米映画俳優組合)のダブルストライキが長引き、合意に至ったのは11月の中旬でした。下半期は動けなかったため来年、再来年までの制作映画数に影響が出ると予想されます。ストリーミングの流通で経営が厳しい映画シアターにとってはこの期間を空白にすることはできないため、お手頃の価格で上映できて好成績を出せる日本映画は命綱のような存在でした。商業映画が盛んなハリウッドでは例年ホリデーシーズンにどれを出すか厳しい戦いなはずが、今年は制作自体間に合いませんでした。本土のコンテンツがない中、初めて世界に目を向けたところで日本映画の商業性が力強く浮き上がったのです。

Image Credit: The New York Times

目の前の花道

一方で、日本にとってもこのタイミングは絶好のチャンスであり、今期から再来年にかけては流行に需要が重なりました。文化輸出がもたらす経済効果は言うまでもなく、まさに日本が今必要とする景気向上の大チャンスなのです。さらにエンタメの観点だけを見ても、今まで予算的には比にならなかった映画の本場ハリウッドで商業性の実力が認められれば、今後の日本映画への資金投資も桁違いに増えると期待ができます。ストライキの結果さらに制作費が高騰すると予想される米国映画に比べて、日本映画は熟した市場を持つネタと資金回収がし易い予算という魅力的な強みがあります。投資家たちがそこに気づいてくれると海外からもっと資金が流入し、日本でもハリウッドレベルの映画が作れると夢が膨らむ流れが目に見えてきました。

すでにAMCでの劇場予告からもその野心が現れ、年明けに上映がすでに予定されている日本映画の数々が紹介されていました。またHULUからの大作「Shōgun」2月に配信が開始します。日本色に染まっていく北米のエンタメ界、念願の夢舞台への花道を日本らしく歩んで欲しいです。

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