「ストリート・カルチャー」、アメリカに住んでいる人やアメリカに関心を持っている方にとって、一度は耳にしたことがある言葉かもしれません。ストリート・カルチャーとは1970年代にアメリカ・ニューヨークのストリートで発祥したヒップホップやスケートボードなどのカルチャーから生まれた文化のことを指し、Nikeなどの米国人気ブランドの多くもストリート・カルチャーと深く関わりがあります。
アメリカ発のストリート・カルチャーは、最近では世界中で爆発的な人気を持つヒップホップの影響もあり、ファッションやデザイン、アートなど、様々な分野でストリートから生まれた新たな動きが起こっています。そして、この新たな流れの中で特に注目されているのが、ストリート・カルチャーと他文化との融合です。
ストリート・カルチャーとの融合
近年では、日本もヒップホップが人気になっており、2022年に初の武道館ワンマンライブを開催したAwitch氏を筆頭に、日本人ラッパーも世間を騒がし、世界のストリート・カルチャー人気が日本にも到来しています。そんな時代の中で、日本文化とストリート・カルチャーが融合し、新たな盛り上がりをみせる領域がいくつもあります。
その内の一つが、けん玉です。、読書の皆様も、日本の昔ながらの遊びの一つであるけん玉で一度は遊んだことがあるのではないでしょうか。現在、けん玉は、ストリートけん玉として世界的に認知が広がり、ストリート上で行われる新しい形態のスポーツとして進化しています。特に、BMXやスケートボードのプレイヤーたちにとって、その合間に手軽に楽しめる新しいスポーツとして注目されています。
世界各国では、アメリカやデンマーク、イスラエルなどで独自のけん玉ブランドが誕生し、プロのけん玉プレイヤーが活躍するなど、日本以上にけん玉に熱狂するコアなファンが多く存在しています。InstagramやYouTubeなどのソーシャルメディアでは、『#KENDAMA』で検索すると、世界中のけん玉プレイヤーが驚異的な技術や個性的なスタイルを披露しています。このような動画や投稿によって、けん玉の魅力が国境を超えて広がり、グローバルなコミュニティとして楽しまれています。
ストリート・カルチャーと日本文化の融合
ストリート × 伝統文化
盆栽
ストリート・カルチャーから生まれた新たな盆栽のスタイル。盆栽プロデューサーの小島鉄平氏が、プロデュースする盆栽は、彼のバックグラウンドからストリートカルチャーのアイデアを加え次世代の盆栽を世界に発信。ポルシェなどの海外ラグジュアリーブランドとのコラボもしている。
HIPHOP × 侍 × 木製人形(ART)× ストップモーション映画
日本の江戸時代にいたとされる、実存不明な伝説的彫刻職人「左甚五郎」の物語を木製人形を使い、長編映画化するプロジェクト「HIDARI」は、クラウドファンディングで1,000万円以上を集める。
ストリート×地域活性化
TOSHIMA STREET FES.2023
「池袋をストリートカルチャーの街に」という目標を掲げ、今年冬から池袋でストリートカルチャーのメインストリームであるダンスバトルやラップバトルイベントを開催。区や地元企業が協力し、会場には初開催にも関わらず3万人以上の人が集結。
ストリート×ファッション
堀米雄斗×Nike SB dunk low
2023年8月に販売された、金メダリスト堀米雄斗とNikeのコラボシューズ。シュータンタグの裏やヒール横などに堀米家の家紋“鷹の羽紋”を施しているほか、インソールでは「ナイキ SB」のロゴや“鷹の羽紋”を米粒で表現するなど、日本・カルチャーが多くデザインに採用されている。
Evisen Skateboards
浮世絵をモチーフとしたものや妖怪をモチーフとしたものを多く扱い、日本発祥のスケートボードブランドとして世界中で人気を集めるEvisen skateboards。アジアNo.1スケートボードブランドとの呼び声も高いEvisenは、DELUXEなどの海外の有名ブランドとコラボするなど、近年勢いのあるブランド。
以下、EISの考察です。
- これまで、アンダーグラウンドな存在として捉えられることの多かったストリート・カルチャーだが、Nikeの広告塔にマイケル・ジョーダンを採用したことや、スケートボードなどがスポーツとして認められるようになってきたことで*オーバーグラウンドな存在になりつつある (*オーバグラウンド:アンダーグラウンドの対義語)
- SNSの発展により、日本では若年層を中心に急速な国際化が進み、他国の文化との距離が近づいたことで、現在海外のメインストリームであるストリート・カルチャーが日本でも人気になっている
- 日本の伝統文化をそのまま世界に発信するのではなく、ストリート・カルチャーなどとの掛け合わせをすることで、けん玉や盆栽のように、海外でも受け入れられる可能性が高くなるのではないか
- ストリート・カルチャーを起爆剤に、若年層を巻き込んだ地域活性化が期待できる。実際に、池袋の事例では、毎年行われていた文化の日イベントに、ストリート・カルチャーを掛け合わせることで、数千人規模から、一気に3万人をイベントに動員。このようにストリート・カルチャーをマーケティングの手法として上手く使うことで、若年層を取り入れられる