今、日本の中古車のアメリカ向け輸出が急増しています。JAPAN USED MOTOR VEHICLEのまとめによると2014年から2022年までにアメリカに輸出された日本車の台数は10倍以上に拡大し、今年も7月時点で9,709台と、過去最高だった昨年を上回るペースです。
背景にはグランツーリスモシリーズなどのゲームやワイルドスピードといった映画、そして頭文字Dなどの漫画・アニメを通じて日本車がクールなものとして受け入れられていることがあります。そして、日本の中古車のアメリカ輸出を促進しているもう一つの理由が通称「25年ルール」と呼ばれるNHTSA(National Highway Traffic Safety Administration、米国運輸省)が定めたクラシックカー輸入の特例措置です。これは、新車登録から25年が経過したモデルをアメリカの道路交通法の適用外のものでも登録可能という制度で、これにより右ハンドルの日本車(アメリカではJDM=Japanese Domestic Market vehiclesと呼ばれています)をアメリカに輸入して登録、公道を走ることができるというわけです。
アメリカでの日本の中古車の人気は凄まじく、日本の中古車専門の情報サイトも存在します。面白いのはこちらのサイトの人気車種ランキング上位を軽トラが独占している点です。
軽トラがアメリカの若者に大人気!?
今アメリカでは若者の間で軽トラが大人気です。YouTubeではカスタム軽トラ(Kei Truck)の動画が近年急増し、中には100万回再生を超えるものも多数存在します。
アメリカでTruckといえば大型のピックアップトラックが想起され、事実アメリカで1年の間に最も売れている車種はFordのF150です。しかし、ピックアップトラックは値段が高く若者の手には届きにくい上、燃費が悪い車が多く昨今の原油高や環境意識の高まりから必ずしも若者の嗜好とマッチしているとは言えなくなってきています。そんな中で、安価で低燃費の軽トラは時代のニーズにピッタリとはまりました。さらに、個性を重んじる若い世代にとって、カスタムをしやすいシンプルなデザインであることもその人気に拍車をかける要因と言えるでしょう。
原付の輸出先第1位はアメリカ
もう一つ、日本からアメリカへの輸出が伸びているのが原付です。日本自動車工業会によると、2021年に輸出された原付は25,938台で、内6割となる15,710台がアメリカに輸出されました。2位のフランスが2,808台ですからその圧倒的なボリュームがお分かりになるかと思います。アメリカはご存知の通り車社会です。市内の移動でも徒歩や自転車、公共交通機関では厳しいエリアがたくさんあります。そこで簡易な移動手段として原付が注目されているのです。また原付にはホンダのスーパーカブのように優れたデザインのものも多く、若者が単なる移動手段以上のものとして注目するのもうなづけます。
以下、EISの考察です
- 日本の小型車両は環境にやさしい、デザイン性、便利、安価というアメリカの若者のニーズに完全にマッチしている。日本のコンパクトで高効率なものを作る技術は今後さまざまな分野で再び注目される可能性がある。
- 軽トラや原付など、一昔前の商品であっても、時代のニーズを掴むことで新たな価値を生み出す可能性がある。常に消費者のトレンドに目を配り、そのトレンドにマッチしたものを最新のものでなくても当てることでビジネスを生み出すことができる。