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ANIME EXPO 2023 に見た「熱」と、Web3.0とのアナロジー

7月1日〜4日、ロサンゼルス・コンベンションセンターにて、北米最大級の日本のポップカルチャーの祭典 “ANIME EXPO 2023”(以下“AX”という。)が開催されました。熱気に満ちた会場を舞台に、AXに初参戦した筆者によるレポートをお届けします。

Anime Expo (AX)とは?                                      AXは1991年にUC Berkeleyのアニメクラブのメンバーにより“Anime Con”として始まった日本のポップカルチャーの祭典です。当初はサンノゼで小規模に開催されていましたが、次第に成長していき、現在ではアニメ・漫画を中心に、音楽、ゲーム、コスプレ等、日本のポップカルチャーのショーケースとして、そして、ファン同士の交流の場として、北米最大級のイベントとなっています。

目次

0. プロローグ

7月1日、待ちに待ったAX初日。9時30分に会場付近に到着すると、そこには幾重にわたる大きなうねりができていた。しかし、長年日本で鍛えられたヲタクは、そんなことは想定済みである。「どうせ当日券列でしょ?」早期購入・事前配送課金勢の私に死角は無い。首に下げた4日間通し券が、LAの朝日を受けて煌めいた。人混みの中でそれが落ちないよう右手で掴み、事前購入者列の最後尾を探す。そして、微かな違和感。「あれっ、もしやみんな入場券持っている?」AXの入場券は、4日間通し券、各1日券全てが事前に完売していたのだ。日本のポップカルチャーへの「熱」は、アメリカの巨大な会場を取りまく渦として、そこに存在していた。

朝の入場待機列の様子
EIS撮影

1. 日本のイベントとの類似点

巨大会場のレイアウト、そして目当てのパネルのために屋外でも数時間並んだり、大きなキャリーケースでグッズを買い込んだりするファンの姿、コスプレイヤーとそれを熱心に撮影するカメコ(撮影者)の様子に、聞こえてくるのが英語という点を除き、ここは日本か…?と錯覚するほどでした。

また、推し人物/作品を目の前にした時のファンの反応(例:頬に手を当て、wait…!!と繰り返しながら最終的には大歓声を上げる)も、日本のそれと同じという点は興味深かったです。

会場内部の様子
EIS撮影

2. 日本のイベントとの相違点

全体として、コスプレイヤー人口が日本よりも多いのが印象的でした。日本のイベントでは、コスプレ参加登録必須かつ会場内でのみコスプレ可能というケースが多いですが、本イベントでは入口での武器チェックはあるものの、参加者は会場の内外で自由にコスプレを楽しんでおり、LAの街全体にコスプレイヤーが溢れていました。

また、運営面ではアクセシビリティへの配慮を強く感じました。各パネルの待機列には身体障害者用の屋内列(ADA専用列)が優先的に割り当てられており、また会場内最大のホールであるMain Events Hallでは、ほとんどのパネルに手話通訳者が登壇していました。

会場に入る前からコスプレをした参加者が多く見られる。左側の赤いテントはADA専用列。
EIS撮影

3. アメリカにおける日本文化への「熱」 ― ポップカルチャーを超えて

イベントで扱われるのはほぼ日本のポップカルチャーであることから、参加前は日本出身者が会場の半数を占めるのではと想像していました。しかし、いざ会場に行くと日本語はあまり聞こえず、いかにアメリカで日本のコンテンツが愛されているかを実感しました。

また、アニメの枠を超えた日本文化への熱も感じました。例えば、海外でシティポップが人気を博していることは日本でも取り上げられていますが、会場でもシティポップに関するトークイベントが盛り上がりを見せていました。食の面では、会場内で無料の水分補給スペースとして出展していた伊藤園「お〜いお茶」のブースが人気を博していたとともに、会場から遠く離れたフードコートでは日本的なBENTO店に、そして同じく会場と距離のあるジャパンタウンではラーメン店に大行列ができていました。

伊藤園「お〜いお茶」のブース
EIS撮影

4. Web3.0とのアナロジー ーファンコミュニティ構築のヒント

以上のように、AXはアメリカにおける日本のポップカルチャー、そしてその周縁への熱気を直に感じる場でした。また、会場の至る所で、同じアニメ作品の違うキャラに扮したコスプレイヤーたちが声を掛け合って一緒に撮影をする様子が見受けられましたし、付近のホテルの共有ラウンジには、推しトークに明け暮れる参加者達の姿がありました。このように、推し人物/作品をより輝かせるために、ファン達自身が機運を盛り上げ、その価値を向上させ、楽しみを分かち合うというコミュニティの在り方は、日米で共通するものと言えます。

ところで、このファンの「熱」を中心とした非中央集権的コミュニティというのは、Web3.0の世界との共通点とも言えるのではないでしょうか。「推し活」という単語がメジャーになるずっと前から、アニメ・漫画の世界の多くは、先述のようなファンの「内側からの熱」に支えられて進展してきました。ここで注目すべきは、熱の発生源がファンコミュニティの【内部】にあるからこそ、そのコミュニティやそこから湧き上がるムーヴメントはファン達が自ら作り上げたものであるという意識が生まれ、盛り上がるという点です。例えば、SNS上でファンによる自然発生的なムーヴメントが起こった時、公式側がそれに乗じてバズらせようとすると、急速に熱が冷めてしまうという事象は多々見受けられます。

Web3.0関連ビジネスに関心のある方にとって、どのようにファンコミュニティを構築するかは一つの課題でしょう。その際、あくまでファンの「内側からの熱」を大切にし、作為的にファンを誘導することがないよう留意することが、コミュニティ構築を成功させる一つの要因と言えそうです。

5. Sustainableな「熱」のために ー 海賊版対策の必要性

最後に、海賊版対策の必要性について触れたいと思います。出展者の中には、残念ながら知的財産権を侵害したグッズを販売している者も多数見受けられました。一昔前は、コンテンツを広めるべく海賊版が黙認されるケースもありましたが、ここまで多くのファンがついている現在、グッズのみならずアニメ・漫画作品そのものを含め、いかにファンに正規版を使ってもらうかというフェーズにあると言えます。

権利者側による継続的な働きかけの結果、アメリカでも正規版に対する意識が高まりつつあることを、現地在住の筆者としても感じるところですが、ファンによって生み出される「熱」が正当にクリエイターに還元され、そして新たな「熱」を創り出す原動力となってくれることを願っています。

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