ChatGPTの爆発的普及で一般でも有名になったOpenAIのCEO、Sam Altman氏が設立した団体が3月にWorld IDを発表しました。World IDとは、分散型の仮想通貨ウォレット*で、名前や電子メールなどの個人データなしで実在する人物を証明し、仮想通貨の管理、World ID利用者間での仮想通貨の送金、対応するWeb3.0サービスのサインインに利用できます。
仮想通貨ウォレットとは
仮想通貨を保管する電子財布であり、取引所、スマホアプリ、デスクトップアプリ等で管理されます。
このサービスはワールドコイン財団が提供しています。彼らは仮想通貨イーサリアム上で動作する仮想通貨Worldcoin(ワールドコイン)を無償で配布し、仮想通貨の性質であるユニーク・改ざんされない性質を活用してセキュリティを高め、更に指紋より効果の高い瞳の模様である「虹彩」を活用することにより、より強固な本人認証ができることを訴えています。
ワールドコイン財団はSam Altman氏らにより2021年に設立されました。すべての人のスマートフォンに暗号財布を搭載するという野心的な考えの元Worldcoinを発表し、南米、アジア、アフリカ、ヨーロッパで初期テストを行ってきました。これまでの活動により170万アカウント、29か国に拡がっています。投資家はDigital Currency Group、Coinbase Ventures、a16z、Multicoin CapitalやLinkedIn創業者のReid Hoffmanが参加しており、これまで1億2,500万ドル(約175億円)を調達しています。Worldcoinの供給上限は、すべての人類にアカウントを発行できる100億枚で、10%が投資家に供給される予定です。
以下、EISの考察です
- World IDのような仮想通貨技術を用いた強固で安全な個人情報管理サービスは多くある。筆者も昨年イーサリアムの創業者が提唱するSoul Bound Tokenをとり上げたが、その中でWorld IDは利用者の浸透度と実装度、セキュリティ面で一歩進んでいるように見える
- 普及にはユーザーのアカウント数が重要な要素である。World IDは仮想通貨のヘビーユーザーではなく、南米、アジア、アフリカ等の発展地域のユーザーを獲得しようとした
- World IDが真に成功するためには、仮想通貨業界でのアカウント獲得・新しいサービス提供にとどまらず、既存業界である金融、不動産、不動産、教育、EC、政府といった、多くの業界に拡がるかにかかっている