2023年1月5日より、米国ラスベガスでCESが開幕します。CESとはConsumer Electronics Showの略で、1967年、ニューヨークにて家電の見本市としてスタート。今日では世界最大規模のテクノロジーとイノベーションの祭典です。
CES2021は完全オンライン、CES2022ではオミクロン株の影響で相次いでAmazon、Google、Microsoftなど大手企業が出展をキャンセル、と2年連続で従来のCESの勢いはありませんでした。今回のCES2023では一転、先に並べた企業含め出展企業は2500社以上、前回の4.5万人を大幅に上回る10万人以上の来客が予想されており、コロナ以降で1番の盛り上がりを見せることでしょう。
コロナ禍では遠隔/在宅医療を代表とするデジタルヘルスケアが確立、健康意識の高まりからスリープテックも台頭しました。ヘルスケア以外にも、自動車を始めとするモビリティや家電製品のエネルギー消費などで脱炭素化の動き、そしてフードロスや食糧の安定供給への取り組みも加速しており、これらビジネストレンドを世界のリーディングカンパニーがどのように取り組んでいるのかはCESでも大きな見どころです。
名だたるグローバル企業が新製品を発表するだけではなく、スタートアップにとっても自社をアピールする絶好の機会となっています。CESの主催者であるCTAは、CESに先立ち毎年11月に「Innovation Awards」を発表。大企業の製品だけではなく、多くのスタートアップ製品が受賞しています。今回はInnovation Awards受賞の中から注目の5つを紹介します。
注目製品① Hi(Hyundai intelligent)-GAS+
企業名:KOREA SHIPBUILDING & OFFSHORE ENGINEERING CO., LTD.
同社の自律型船舶運航支援システムが受賞。未熟なオペレーターでも船舶の運行を実現。さらにAIの活用によって最も燃料効率が良いルートを提案。安全で経済的、かつサステナブルな運航を実現。
自動車がスタートとなった自動運転は、自動車の枠を超えて船舶や航空などモビリティ分野全体のトレンドとなりつつあります。同様に、脱炭素化も船舶や航空業界で進んでいます。
注目製品② Climatics and Smartbase
企業名:ACS
デジタルツイン技術と機械学習を活用した不動産管理プラットフォーム。建物の設備をデジタルで可視化する上に、エネルギーの消費を可視化して、エネルギーの使用を自動で制御する機能も取り入れている。
電気代の高騰、サステナビリティ意識の高まりを背景に省エネを推進するサービスが多く登場。加えて、AIによってより高度かつ正確なデータ分析を実現でき、更なるエネルギー効率の向上、省エネが可能に。
注目製品③ GutNote
企業名:Suntory Global Innovation Center Limited
蠕動運動音で腸の健康状態を確認できる世界初のスマホアプリ。腸の音を録音することで、AIが現在の腸の状態を分析し、パーソナライズされた献立を提供。
コロナを皮切りに遠隔/在宅医療に代表されるデジタルヘルスが確立。昨今では医療目的に加え、AIを活用した健康維持を目的とした比較的カジュアルなサービスも台頭。特にバイタルサインの取得においては、従来の腕時計型は血管からデータを捉えていたのに対して、腸や爪など身体の様々な部位から必要な時にだけ取得するデバイスが登場。バイタルサインの取得データの多様化が進み、今後そのような健康状態データの行方にも注目が集まります。
注目製品④ Predictive shelf-life of fruits & vegetable scanner
企業名:OneThird
ポータブルなスキャナーと同社独自のデータベースやAIアルゴリズムにより、生鮮食品の賞味期限を予測。フードロスを25%削減し、関連する人件費も50%削減が可能に。
自然災害や食糧・エネルギー・水不足の対応などに目を向けたサステナビリティ関連もCESでは多く出展されています。特にアメリカやヨーロッパでは厳しい政府の規制も相まって、サステナビリティ関連ビジネスの需要が高まり、新しいビジネスも多く出てくることでしょう。
注目製品⑤ Contact Glove
企業名:Diver-X
9月に開催された東京ゲームショウにも展示され話題だったVR触覚グローブ。メタバースでは繊細な触覚まで与える技術はなく、VRコントローラ自体の振動といった大雑把な触覚止まり。このグローブでは、メタバース内の動きに合わせてグローブ内のフィルムが指を圧迫し、繊細な触覚を与えることが可能に。ユーザーはメタバース内にあるものをまるで触れたり、持ったりという感覚に陥ることができる。
一般化まで厳しい道のりを辿っているメタバースですが、ハードウェアの使い勝手やユースケースの幅広さの向上によって、ぐんとその道のりを縮める可能性があります。