発酵は、日本のみならず世界でも大ブームを引き起こしています。発酵食品の様々な効能・効果については、身近でも色々と聞かれたことがあるのではないでしょうか?そうした発酵の可能性は、世界のスタートアップ界も注目するところとなり、Good Food Institureのレポートをベースとしたこちらの記事によれば、ここ数年で投資マネーの流入も急増しています。
3つに分類される発酵技術の種類
同記事は、技術的な観点から、発酵が、以下の3つに分類されると説明しています。
①伝統発酵
コンブチャ、ザワークラウト、ピクルス、味噌など、カビを使用して風味や食感に富んだ製品を作る。世界各地で様々な発酵食品が作られてきた。
②バイオマス発酵
微生物が大量のタンパク質を素早く生成する特性を利用して代替肉等の製造を行う。ドイツのProteinDistilleryは使用済みのビール酵母を使って、動物性物質を含まない、ビタミンが豊富な代替タンパク質を作り出している。米国コロラド州に拠点を置くMeati Foodsは、キノコの根にある菌糸体を使って、肉に似た食感を持つ代替肉を提供している。
③精密発酵
微生物を用いた、いわば「細胞工場」を作り、酵素、香料、タンパク質、ビタミン、天然色素、油脂などの特定の機能性原料を製造する。発酵ビジネスの中でも、恐らく最もスケールが広がる可能性を秘めており、大規模な投資マネーを惹きつけつつある。EVERY Companyは、精密発酵によって動物性物質を含まない卵白の代用商品を製造している。
発酵界で注目のスタートアップ
上記②や③の「進化した」発酵ビジネスの最大のチャレンジは、大規模な生産設備が必要となることであり、ここ数年の投資マネーの急増の背景には、そうした施設の建造ラッシュが起きていることも指摘されています。Good Food Instituteのレポートでは、以下のプロジェクトが紹介されています。
- The Protein Brewery(オランダ) 2021年竣工
- The Better Meat Co. (米カリフォルニア)2021年竣工
- Nature’s Fynd (米シカゴ)2022年予定
- Mycorena(スウェーデン)2022年予定
- Solar Foods(フィンランド)2022年予定
一方で、①の伝統発酵の世界における市場の拡大も見逃してはなりません。コンブチャの市場は、2022年の21億ドルから2028年には61億ドルに達すると推定されており、年平均成長率は20%に達します。また、ザワークラフトの市場も、2019年の87億ドルから2027年には141億ドルに達し、6%近い年平均成長率で成長すると予測されています。
以下、EISの考察です
- 新型コロナの世界的感染のような未曾有の事態に現代医学が苦戦したこともあり、人々が慣れ親しんできた自然食材や発酵のような叡智が見直されている(例:万能きのこ)
- 日本はそうした食材や叡智の宝庫であり、世界からも注目されているが、残念ながら次世代に向けたイノベーションの創造をリードしているとは言えない
- 今後、発酵のような古くから伝わる人類の叡智をベースに、技術を掛け合わせることでのイノベーション創造活動が新たなトレンドになる可能性は大きい
- 古い歴史や文化の中で育まれた豊かな生活様式を持ちつつ、近代化以降、産官学を高度に発達させてきた日本にとって、チャンスになるのではないか?