地球の表面積の70%を占める海は、人類に様々な恩恵を与えてくれています。一方で私たちはこの素晴らしい資産を十分に活かせているとは言えません。特に「生産地としての海」はまだまだ大きなポテンシャルを秘めています。
海藻から生み出される様々な商品
私たちが海で生産しているものといえば養殖の魚介類と海苔などの海藻類が思い浮かびます。海藻は食用以外でも化粧品の材料や肥料として利用されており、私たちの生活に欠かせない存在です。また、近年ではバイオ燃料の材料としても注目されています。加えて、各国のスタートアップにより新たな用途も開発されています。
アメリカのAKUAは昆布を原料とした代替肉を製造しており、すでにジャーキー、挽肉を販売しています。イギリスのNotplaは海藻からパッケージ材を作り出しています。100%食用で生分解性のパッケージはそのまま食べてしまうこともできますし、廃棄しても4~6週間で分解されます。
イギリスのサステナブルなアパレルブランドVollebakは海藻を原材料としたTシャツを製造・販売しています。このTシャツは着用後土に埋めると12週間で生分解されます。
海藻農業の課題と画期的ソリューションの出現
世界の海藻産業は過去20年ほどの間に2倍の規模に拡大しましたが、現在の市場規模は150億ドルであり、多くのスタートアップの参戦で盛り上がる屋内農業の市場規模323億ドルの半分以下です。また今後の年成長率も7.51%程度と、海の持つポテンシャルを考えると物足りない数字です。
海藻産業が劇的に成長していない最大の理由はその古典的な生産方法にあります。日本では江戸時代の1700年台前半に海苔の養殖が始まったとされますが、それから300年間、生産技術的進歩はほとんどありません。これは言うなれば陸上において鍬と鋤を用いて人力で畑を耕しているのと同じ状態であり、すでに自動運転トラクターやドローン、AIなどの技術を用いて生産効率を高めている陸上農業に比べて大きな進化の遅れです。この課題を解決すべくいくつものスタートアップが海洋農業の技術革新に挑んでいます。
例えばインドのSea6EnergyのSea Combine(シーコンバイン)はその名の通り、海洋農業におけるコンバイン兼トラクターで、海藻の収穫と植栽を同時に行います。現在はインドネシアで実証実験を行っていますが、実用化されればこれまで人力で行われていたこれらの作業が機械化、自動化され、生産効率が劇的に向上します。
以下、EISの考察です
- 環境に対する消費者意識が高まっている今は海藻の用途拡大の絶好機。特に、海に囲まれ海洋資源に恵まれた日本こそ、海洋農業から受ける恩恵は大きく、温暖化対策、環境対策の切り札としての海藻の利活用に注目したい
- 海洋農業は技術革新が進んでいないため、まだまだ大きな伸び代が見込める領域。特に今後は陸上での農業同様生産者の高齢化が進んでいくため、機械化、自動化に対する需要は高まると考える