ウェアラブルスポーツテックブランドPolarが行った最近の調査によると、Z世代はエクササイズとして週に3回以上ウォーキングをしており、2020年と比べて2021年にはその割合が25%増加したそうです。特にパンデミック以降、Pelotonなどのオンラインフィットネスが台頭してきたのは周知の通りですが、そんな中でZ世代が最も好むワークアウトがウォーキングと聞いて驚いた方もいるかもしれません。流行に敏感な彼らがブートキャンプやHIITといった強度が高い流行りのワークアウトではなく、なぜ最もシンプルかつ我々の生活に身近なウォーキングをエクササイズとして生活に取り入れているのでしょうか?
1. 対面で関係を築ける
デジタルネイティブであるZ世代は、SNSやイノベーティブなサービスやアプリなどを通じて周りの人とあらゆることをシェアすることに抵抗が少ない世代と言えます。それはTikTokやInstagramで日常生活をコンテンツとしてさらけ出すことから、以前のInsightで紹介したIRLといったソーシャルカレンダーの共有まで多岐に渡ります。BBCによると、彼らはZoomのようなオンラインベースの通話も「対面」だと考えているそうですが、このようなオンラインで多面的に幅広い交友関係を築いていることも相反し、Z世代は現実社会では特に経験を共有して関係を築くことに重きを置いています。
ウォーキングの場合、年齢、収入、フィットネスレベルなどに関わらず、誰とでもどこでも気軽に一緒に体を動かせるということと、他の運動に比べて負荷が少ないため一緒に会話を楽しみながら友人や家族との関係を強化できることも、Z世代に支持されている理由と考えられます。
2. メンタルヘルスの向上
Z世代は肉体的な健康に加え精神面の健康も重要と考え、健康とウェルネスに対してよりホリスティックなアプローチを取る傾向にあります。ウォーキングには様々な効果がありますが、定期的にウォーキングをすることで不安や鬱といった慢性的な精神疾患に関する症状が緩和されると言われています。トレンドに敏感な一方でオープンマインドなZ世代は、「エクササイズ=負荷が重要」「歩くだけは退屈」「ウォーキングは年寄りのもの」といった固定観念に捉われず、低負荷かつメンタルにも効果があるアクティビティを自分達なりに受け入れ楽しんでいます。
例えば最近では、TikTokでThe Hot Girl WalkというウェルネスルーティンがZ世代を中心に爆発的に流行っています。内容は、毎日4マイル(約6.5キロ)のウォーキング中に「セルフラブ・感謝・目標」の3つだけを考えながら歩くというものです。このようなブームも後押しし、Z世代にとってウォーキングは生活にマインドフルネスを取り入れる最適な手段となりました。
マルチタスクに慣れている
Z世代は物心をつく前からスマートフォンやタブレットなど、常にスクリーンを見てコンテンツを消費してきました。そのような背景からNetflixを見ながらオンラインゲーム上で友達とチャットしたりと、特に10代の若者は一つのことを集中して行うことは稀で、少なくとも2つのことを同時に行うマルチタスクを無意識的にしていることがBusiness Insiderの調査で明らかになりました。そんなZ世代にとってウォーキングは、汗をかきながら体と心の健康を維持でき、そして友人や家族などと交流が同時に図れるという、まさに一石三鳥とも言える効率の良いエクササイズなのです。
以下、EISの考察です
- フィットネスの分野では身体的な健康改善に重点が置かれやすいが、ウォーキングはマインドフルネスといった精神面やコミュニティ要素など社会的な側面を兼備するため脚光を浴びている。マルチタスク慣れしているZ世代に対しては、このように複数の価値を併せ持つことで支持を集めやすくなる
- また、TikTokといったテンポの速いコンテンツの消費に慣れているZ世代は、単的で単調なことをすると気が散ったり飽きてしまう傾向にある。いかなることにも刺激を求めるZ世代の心を掴むには、サービスにSNS要素を加えたりゲーミフィケーションするなど、エンゲージメントを高めるような工夫が功を奏す
- Z世代は自身の目的達成に有効なものであれば、それが新しいか古いかに関わらず採用して試すという柔軟性がある。そのような彼らの価値観に上手に訴えかけることができれば、既存の商品やサービスでも新たな事業機会を得ることができる