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スポーツベッティングの台頭は、消費者のスポーツとの関わり方をどう変えるか?

スポーツベッティングは何世紀にもわたって行われてきましたが、近年は合法化に向けて、これまで以上に多くの利用者が集まっています。かつては競馬やアンダーグラウンドの違法なスポーツブック*に限られていたものが、今では米国内だけで95億ドルもの価値を持つ活況を呈する産業となりました。専門家の予測では、この市場は2025年までに280億ドル規模になるとされており、さらなる合法化と文化的受容によって期待される成長率の高さを示しています。現時点では、米国の約30州でスポーツベッティングが合法化されていますが、近い将来、全米50州すべてで合法化されることが予想されます。最近では、ニューヨークでオンラインのスポーツベッティングが合法化され、最初の5週間で24億ドル以上の賭けが行われました。

※スポーツブックとは世界中のスポーツや国際的なイベントにお金を賭けて楽しむ行為

スポーツベッティングが合法化されるにつれて、文化的にも受け入れられはじめています。企業が主流メディアを通じてスポーツベッティングの広告を出すようになり、ますます多くの初心者ベッターがスポーツベッティングのムーブメントに参加し始めています。Adweekによると、2021年にスポーツベッティングの広告に3億3600万ドルが費やされたそうです。2021年のスーパーボウルで広告を出したベッティング会社は1社のみでしたが、今年は6社の出稿がありNFLの試合中のベッティング広告の数に制限がなければ、スポーツベッティング関連のCMはもっと多かった可能性が高いのです。

消費者が日常生活の中でスポーツベッティングを目にするようになったことを考えると、業界が犯罪者によって運営されていた頃と比較して、消費者は安心して関与し、自ら賭けをする可能性が高くなります。広告だけでなく、ディズニーが所有するアメリカ最大のスポーツチャンネルであるESPNなどの大手メディアネットワークも、スポーツベッティングを放送に取り入れ始めています。 ESPNは、ユーザーがスポーツベッティングを理解し、最終的には専門家のアドバイスによってお金を稼ぐことを目的とした「Daily Wager」などのベッティング専用コーナーを放送し始めているのです。

Image: Joe Faraoni / ESPN Images

スポーツベッティングの台頭が続く中、この動きが消費者のスポーツとの関わり方をどのように変えていくのか、興味深いところです。テレビ観戦の体験が変わっただけでなく、スポーツイベントに参加するという対面での体験が急速に変化し始めていることが分かります。スポーツチームはベッティングを阻止するのではなく、業界におけるベッティングの役割を受け入れ、ユーザー体験を向上させるためにベッティングを活用するようになってきています。スタジアム内のスポーツベッティング専用ラウンジから、周辺地域のスポーツベッティングをテーマとしたレストランやバーまで、試合当日の風景は日々進化しています。アリゾナ・カージナルスワシントン・ナショナルズなどのチームは、スタジアム内のスポーツ・ベティング・ラウンジですでに成功を収めており、ユーザーがベッティング・コンテンツを視聴し、対応アプリで賭け、他のベッターと交流できる場を提供しています。これらのラウンジでは、通常、その場所でしかアクセスできない限定プロモーションやディールをユーザーに提供しています。

image source: Gambliance

また、スポーツベッティングのブームに乗じて、球場周辺にベッティングをテーマにしたレストランやバーを設置し、利用客が直接ベットできるようにすることも行われています。その一例が、新たに認可されたシカゴ・カブスのスポーツバー・レストランで、DraftKingsが運営し、チームの試合中だけでなく常時ファンを受け入れる予定です。これにより、スポーツ好きがチームの試合の有無にかかわらずカブスのスタジアムに向かう理由ができる環境を作り、チームに新たな収入源を提供することになります。

image credit: Chicago Cubs: WTTW News

現時点ではまだ新しいトレンドですが、今後、多くのチームがこの業界を受け入れ、急成長していくことが予想されます。現在、アメリカにある数百のメジャースポーツチームのうち、この種の施設をオープンまたはその計画を発表しているのは8チームだけです。今後これがすべての主要スタジアムでスポーツベッティングが導入されることになれば、スポーツ観戦の体験は現在とは大きく異なるものになるでしょう。

スポーツベッティングのプラットフォームやサイトが社会的に受け入れられ、利用しやすくなったことを考えると、賭けを始めるユーザーの割合が圧倒的に高いのは当然のことです。スポーツベッティングは、お金を稼ぐための手段である以上に、スポーツの知識を証明し、忠誠心を示し、最終的にはエンターテインメント体験を向上させる手段であると考えられるようになってきています。一度賭けをすると、消費者はすぐに一生懸命稼いだお金を賭けていることを実感し、より濃密な体験ができるようになるのです。かつては勝敗を決めるだけでしたが、今では選手の活躍や試合中のプレイ(ホームランやゴール)のタイミング、極端な話で言えば選手が試合で履く靴の色などまで細かな事象に賭けることができるようになっています。この変化は、これまで以上にゲームへの関心が高まっていることを表しており、最も忠実なファンは自分が誰よりもチーム、選手、ゲームを理解していることを自分自身や周囲に証明しようとしているのです。

例えばMBAの場合、どのプレイヤーが3ポイントのシュートを3回以上決めるかを両チームから8人予想して的中すると$5の賭けが約737倍の配当金になるといったように、勝ち負けだけではなく様々なゲームの要素に賭けができるようになっている。
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以下、EISの考察です。

  • スポーツベッティングはファンの選手やプレーへのより深い理解をサポートし、スポーツの本質である戦略や技術を楽しむ姿勢につながる。また、チームの勝敗以外の話題も提供するため、スポーツ産業自体の拡大に大きく貢献していく
  •  スポーツベッティングが広がることで、賭けを楽しむレストランやバーなどの施設や、予想の参考となるデータや映像の提供など周辺ビジネスが拡大する。またそれら周辺分野の盛り上がりはファンのスポーツへの興味のさらなる高まりとしてスポーツ産業にも返ってくるため、コンテンツとしてのスポーツの価値を高め業界全体の成長にも繋がっていく

参考文献

  1.  Front Office Sports
  2.  AdWeek
  3.  Axios

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