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ブロックチェーンがゆっくりと破壊する、保守的な保険業界

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この10年で、ブロックチェーンは金融業界に革命を起こしました。ブロックチェーンはその後、分散型ガバナンスによる信頼構築、コンセンサスと共有情報による検証の自動化などの機能から、電子署名、製品情報の追跡や契約事務の電子化、そしてNFTアートなど他の産業でも活用されるようになりました。

一方で保険業界はとても保守的で、この50年間技術的な向上は限られていました。しかしブロックチェーンを活用すれば、信頼、説明責任、完全性、セキュリティ、プライバシーを提供するために使用することができ、今日の保険会社の運営方法を劇的に変える可能性があるのです。

目次

紙ベースのプロセスのデジタル化と不正防止をサポートするスマートコントラクト

1. クレーム管理

保険金請求処理は煩雑であり、既存の保険会社では管理が不十分な場合が多くあります。スタートアップ企業はブロックチェーンを活用してこの問題に取り組み、既存企業との差別化を図っています。また、ブロックチェーン技術を用いたスマートコントラクトを通じて、重要な瞬間に不変の記録を作成することができます。


米国のスタートアップLemonadeは今や100万人以上の顧客を持つユニコーンで、住宅保険のクレーム処理を迅速化する技術をいち早く採用した企業です。クレームが発生すると、スマートコントラクトが直ちに損害の確認を試みるため、顧客は迅速に支払いを受けることができます。Lemonadeは、ブロックチェーンとAIの両方を活用した同社のソリューションが、クレームとその支払いを3秒以内に処理できることを実証しました。

photo credit: TechCrunch


2. プロセスの効率化・ペーパーレス化

エストニアに拠点を置くGuardtimeは、Ernst & Youngと共同でブロックチェーンベースの海上保険プラットフォーム「Insurwave」を開発し、既存の発注書、インボイス、船荷証券、内容申告書といった紙書類の代わりにスマートコントラクトを用いて、保険会社が徹底的に補償できるように、不変的な出荷連鎖を確立しています。

photo credit: Ernst & Young

3. 不正行為の検出

分散型台帳は不変の記録を作成することができるので、不正の可能性を排除することができます。スウェーデンでは、失業保険の不正を防ぐために使われています。 AXAはスウェーデン雇用庁と共同で失業証明書をデジタル化し、不正を完全に排除してプロセスを大幅に合理化しました。

  • 被保険者は紙ベースの証明書を収集していましたが、ブロックチェーンに対応した証明書では改ざんが不可能となる
  • AXAは、雇用機関から直接証明書を回収し、被保険者に直接補償を行うことができる

このような技術は、フィンランドの国民保険Kelaでも、健康保険の不正防止を目的としてテストされています。また、保険金支払いのために開発されたスマートマネーには、支払いの目的を定義し、誰(医師、病院、薬局)に、いつ、何のために使えるかといった制約を定義するスマートコントラクトが埋め込まれています。

photo credit: Kela

分散型台帳技術による保険の分散化

最近では、ブロックチェーンの中核であり最も破壊的な価値である分散化が保険において活用され、根本的に新しいビジネスモデルが開発されています。

1. 再保険

再保険は、現代の保険の柱となっています。元受保険会社、ブローカー、代理店が発行した保険のリスクの一部または全部を、再保険者(通常は大手金融機関)が引き受けるプロセスのことを指します。再保険のプロセスは、ごく少数の大規模なプレーヤーに開放されています。ブロックチェーン・ベースのプロトコルは、このプロセスを分散化し、より多くの投資家に開放し、既存のボトルネックや仲介者を取り除くために開発されたものです。

スイスの保険会社コンソーシアム(共同事業体)であるB3iは、財産再保険契約用のブロックチェーンプロトタイプを開発しました。38の保険会社とブローカーの参加により、再保険契約プロセス全体を安全なブロックチェーン上で実行することを実現しました。

また、ドイツのスタートアップ企業であるEtheriscは、投資家、保険会社、ブローカーをつなぐ6種類の分散型保険関連アプリケーションを開発しました。そのうち2つの製品はすでにライセンスを取得し、商業化され、投資家に提供されています。

  1. 農家が気候変動による作物の損失リスクをカバーできる作物保険
  2. 保険金請求を自動的に処理し、瞬時に支払いが行われる航空便遅延保険

photo credit: Etherisc

2. P2P保険

P2P(Peer-to-Peer )保険とは、シャアリングエコノミーを保険に適用したもので、共同消費の概念に基づいた互恵的な保険契約のことを指します。B2B(再保険)にとどまらず、ブロックチェーンは現在、消費者向けアプリケーションに活用されています。いくつかの企業が真のP2P保険を開発しており、保険の加入者は分散型台帳として把握された共通のリスクプールに貢献することになります。サポートされるメンバーはスマートコントラクトに固定され、これらのコントラクトを使用して、各クレームの支払いを透過的に投票し実行します。Ooniqはこのモデルを携帯電話の保険に応用しています。

photo credit: Ooniq

3. P2Pマーケットプレイス

ブロックチェーンのもう一つの用途は、保険証書の取引の分散化です。これは従来、保険会社しか買い手のいない流動性の低い市場でした。FidentiaXは、取引可能な生命保険証券のための世界初のC2Cマーケットプレイスを開発しました。顧客は、同社のブロックチェーン上で保険証券を売買・保管することができます。このプラットフォームは、保険契約の全履歴の不変の記録を提供しています。また、生命保険が不要になったユーザーは、その保険証券を売りに出すことができます。個人投資家は、これらの既存の保険を購入し、投資ポートフォリオを補完することもできます。

photo credit: FidentiaX

以下、EISの考察です

保険はシェアリングエコノミーの元祖とも言える、リスクに対処するための相互/コミュニティベースのシステムとして始まりましたが、長い年月を経てブラックボックス化していました。ブロックチェーンは、中央の仲介者なしに分散化し、信頼を提供する能力を通じて、既存のエコシステムを破壊し続け、保険の本質を取り戻すでしょう。

ブロックチェーンは今後、他業界でも採用されシェアサービスのユースケースを次々とサポートしていくことが予想されます。例えば、以下のようなものです。

  • ライドヘイリング:Uberに代わる、運転手と乗客の信頼できる仲介者
  • eMobility:ピアツーピアEV充電のサポート
  • 旅行、スマートコントラクトによる予約の確保とOTA(Online Travel Agentの略語で、インターネット上だけで取引を行う旅行会社)の代替
  • P2Pコマース、エスクローサービスを必要としないスマートコントラクトによる取引の安全性確保
  • ラストワンマイル物流:信頼できるドライバーと顧客を繋ぎ、既存のプラットフォームの代替

上記の例や暗号資産やNFTといったその他の既知のユースケースを超えて、すべての企業はブロックチェーン技術をどのように適用できるかを検討し、群れに先駆けて革新的なサービスを開発するための実験を行うべきでしょう。

参考文献

  1. LifeHash
  2. Benzinga
  3. StartUs Insights
  4. BuiltIn
  5. Bankrate

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