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マイクロプラスチックという環境破壊爆弾に取り組むフランスのイノベーター、Calyxia

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‍プラスチック汚染は、環境に負荷を与える最も重大な問題の一つです。皆さんは、太平洋にあるプラスチッゴミでできあがった下図のような「第7の大陸」と言われる写真を見たことがあるかもしれません。この絶望的な光景を見れば、プラスチック汚染問題がいかに深刻化しているかに気付かされます。現在、世界でリサイクルのために回収されているプラスチックはわずか14%で、残りのプラスチックは処理されずに環境中に放置されています。‍

氷山の一角に過ぎない目に見える汚染の他にも、より小さなプラスチック粒子がいたるところに存在しています。これらの粒子はマイクロプラスチックまたはナノプラスチックと呼ばれています。環境への影響はまだ明らかになっていませんが、最近の研究ではこれらの粒子がすでに人体に入り込んでいることが分かっています。フランスのスタートアップCalyxiaは、このようなマイクロプラスチック問題に取り組むための技術を開発し、2021年9月にシリーズAで1,500万ユーロを調達しました。

マイクロプラスチックとは?

マイクロプラスチックは、時間の経過とともに劣化した大きなプラスチック廃棄物と、様々な製品に組み込まれているプラスチックのマイクロビーズから構成されています。マイクロビーズは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどで作られた1mm以下の固体プラスチック粒子です。マイクロビーズは、パーソナルケア製品、化粧品、衣料品などの日用品のほか、自動車、鉄道、飛行機などの産業資材や農業などにも使用されています。また、マイクロビーズには毒素や汚染物資など環境中の微量の化学物質を吸着・濃縮する性質があることから、環境汚染はもちろん、食物連鎖を通じて人間にも深刻な影響を与えるリスクが指摘されています。

photo credit: Nature

環境や健康に与える影響は?

オーストリアの環境機関が行った調査によると、EU、日本、ロシアからの参加者の排泄物からマイクロプラスチックが検出されました。内8人の排泄物からは、50〜500マイクロメートルの粒子が検出されたと報告されています。人毛の直径は約100マイクロメートルですから、結構な大きさのマイクロプラスチックだと言えるでしょう。


海洋プラスチックごみ問題は、誤飲などによって生態系に影響を及ぼしている

人体以外にも、魚の内臓や清涼飲料水、水道水などにもマイクロプラスチックが含まれていることが、いくつかの研究で明らかになっています。環境や私たちの健康への正確な影響はまだ不明ですが、科学者たちは人間の生殖能力に直接影響を与え、免疫系にも影響を与える可能性があると示唆しています。EUでは最近、化粧品やその他の製品にマイクロプラスチックを使用することを禁止する政策に対する投票が行われました。しかし、私たちの生活に広く浸透しているマイクロビーズの使用を全面的に禁止するためには、業界がプラスチックやマイクロビーズの代替品を開発・提供する必要があります。

Calyxiaとそのイノベーション

Calyxiaはこのような課題に応えるべく、フランスのトップ化学工学学校であるESPCIとハーバード大学の科学者チームによって、2015年に設立されたフランスのスタートアップ企業です。Calyxiaが開発したイノベーティブなマイクロカプセル・マイクロビーズは、2つの角度からポジティブな影響を社会に与えます。

  1. 現在業界で使用されているマイクロビーズは生分解性でないため、自然環境中にそのまま残存してしまう。そのため、各国政府がマイクロビーズの使用を禁止するような規制を強化している。しかし、Calyxiaのマイクロビーズは生分解性であるため、さらなる環境破壊を引き起こすことなく、化粧品業界を含む様々な業界で安全に使用することができる。
  2. さらに、Calyxiaのマイクロビーズは、プラスチックの耐久性を高めるための添加剤としても使用されており、製品の寿命を10倍に延ばすことができる。従って、プラスチックが分解されて微細な破片となりにくく、環境中に廃棄されるプラスチックの量を減らすことができる。

photo credit: Calyxia

この独自技術で、Calyxiaは現時点で十数種類の特許を取得済みです。インテルが半導体チップ製造業界を牽引してきたように、現在Calyxiaは大手プラスチック製造業者にこのマイクロビーズの技術を自社の材料として使用するよう働きかけており、より大きな市場に参入しようとしています。

以下、EISの考察です。

  • プラスチックと環境問題に真摯に取り組むためには、産業界、規制当局、そして消費者の考え方が「リサイクル」から「再利用」のパラダイムに切り替わる必要がある
  • 今後数年で、再利用の動きを加速させるような循環型経済のソリューションやサービスはさらに増えていくと考えられる。そんな中で、特に消費者に身近な洗剤といった日用品に対して、小売店やオンラインで詰め替え可能な製品の需要が上がっていくと、サプライチェーンをグローバルに刷新することが今後の課題となる
  • Calyxiaが「リサイクル」から「再利用」へと発想の逆転をしたように、既成概念に捉われずにこれまでとは全く違った観点や柔軟性を持つことは、革新的で新しいビジネスアイデアを生み出す機会へと繋がる

参考文献

  1. Nature
  2. The Guardian
  3. Tech EU

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