最近は食品ロスを減らすための様々なサービスが登場していますが、先行する欧州では、スマホアプリを活用したプラットフォーム型フードシェアリングサービスが広く普及し始めています。例えば、「Too Good To Go」や「Karma」は、ユーザーがアプリを介してレストランから余った食品を格安価格で買うことが出来るサービスを提供し、食品ロス削減に貢献しています。
その中でも今注目なのが21年9月にシリーズBでUS$43Mを調達したイギリス発の「OLIO」です。OLIOは、B2CでのフードシェアリングだけでなくC2Cにも対応し、同じ価値観を持つ人々のローカルコミュニティ形成しているという特徴があります。
ボランティアやビジネスとの連携で広がるOLIOのサービス
「OLIO」は、廃棄される前の食品を無料で寄付できるサービスを提供しています。2015年のサービス提供開始以来、500万人ものユーザーを獲得し、現在50か国以上でサービス展開されています。
- ユーザーが自宅で余った食材などをアプリ内に登録
- 受け取りを希望する近所のユーザーとアプリ内でマッチング
- ピックアップ方法を設定し、食品の受け渡しを行う
というシンプルな流れで利用でき、食品を寄付する側・受け取る側双方無料で利用できるため、使い始めのハードルが低いサービスであることが特長です。また、C2Cでのやり取りだけでなく、企業との連携も活発です。
例えば、Food Waste Heroという有志のボランティアがレストランやスーパー等のパートナー企業まで廃棄寸前の食品をピックアップし、OLIOアプリを介して再配布するプログラムがあります。Pret A Manger、Costa Coffee、Tescoなどの大手飲食店がESG施策、食品廃棄コスト削減策としてパートナー企業に参画しており、一部のパートナー企業から支払われるサービス費用がOLIOの収益源となっています。
OLIOのサービスが成立するためにはボランティアの存在が欠かせません。前述のパートナー企業に食品をピックアップしに行くFood Waste Hero(約3万人)以外にも、OLIOの広報をしてくれるCommunity HeroやDigital Ambassador(計約5万人)と呼ばれるボランティアの協力も、サービス成立に大きく貢献しています。
OLIOが他社サービスよりも愛用されている理由
他社の類似サービスは、安くてもいいから余った商品を売り切りたい企業と安く商品を手に入れたい顧客との間で成立し、ビジネス要素が非常に大きいです。一方でOLIOは、一部のマネタイズを除いてすべて無料のサービスであり、その核には「食べ物を捨てるのはもったいない、食品ロスを減らしたい」という共通の信念を持った人々のコミュニティが存在しています。
OLIOのアプリ自体はテクノロジーを活用しつつも、あくまでもすぐに食品を取りに行ける範囲内、すなわちローカルコミュニティがあってこそ成り立ちます。パンデミックを受け、我々は突然地元の狭い範囲での生活を余儀なくされることとなりました。そんな中、地域で余った食材を協力し合って消費し、食品ロス削減に取り組むことで、OLIOが築いてきたローカルコミュニティの絆はさらに深まったのです。
例え1本のニンジンでも1切れのケーキでも、捨ててしまうくらいなら誰かにあげたいとより多くの人が思うようになること、そしてそれを簡単に実行に移せる仕組みを整えることが、食品廃棄問題の解決に必要です。OLIOは、その根本的な解決策に真正面から取り組んだ企業の好例です。
以下、EISの考察です
- さまざまな領域でオンライン化が加速する中、リアルの世界ではローカルコミュニティの重要性が増している。特にCOVID-19の影響で人々が行動範囲を制限された過去1年半で、その傾向は一層強まっている。
- コミュニティを形成する上では共通の価値観・目的意識(=Purpose)が必要。OLIOは「フードロス」「サスティナビリティ」など多くの人が共感するテーマをキーワードに強いコミュニティを築いている
- OLIOはサステイナビリティをキーワードに作り出した強固なローカルコミュニティ上で、地元の自家製食品や手作り工芸品を売買する「MADE」や物々交換するための「GOAL」など付加価値の高いサービスを生み出しつつあり、地域内での持続可能なビジネスモデルの構築という高いハードルを越えようとしている。今後の彼らのビジネス作りは多くの「地域経済」を生み出そうとする企業の参考となる
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