アメリカの学校は5月末から6月あたまにかけて学年末を迎え、およそ3ヶ月近くにわたる長い夏休みに突入します。この1年間、カリフォルニアおよびアメリカの多くの地域では新型コロナウイルスの影響で小学校から大学まで1年の大半がオンラインによるリモート授業で行われました。子どもたちも学校も、そして保護者も多くが初めての経験だったので初期はトラブルも絶えませんでしたが、それも少しずつ慣れてきて日常の一部になってきたように感じます。私の住むエリアでは次年度は完全に対面授業に戻る予定ですが、ITの力を教育に活用することは大きなメリットもありますので、この1年の経験をもとにオンラインとオフラインを融合した新しい教育のスタイルが確立すればいいなと思っています。そこで本日は私の子どもが通っている学校を例にとり、アメリカのリモート学習についてご紹介したいと思います。
アメリカのリモート学習の様子(Tustin Unified School Districtの場合)
アプリのダウンロード&ログインを管理するClever
新型コロナウイルスのパンデミックが広がった直後、子どもたちにはiPadが1人1台支給されました(はじめは個人で所有するものを使用してもいいという話でしたが、セキュリティ等の事情により結局全員に学校から貸し出しになりました)。支給されたiPadには必要なアプリがダウンロードされていて、App Storeを通じたアプリの自由なダウンロードはできない仕組みになっています。その代わりにアプリのダウンロード、およびシングルサインオンによる各アプリへのログインのサポートを行うのがCleverというアプリです。子どもたちは毎朝まずCleverにログインすることで、1つのID/パスワードで各アプリを利用することができます。ちなみに子どもたちがCleverのID/パスワードを記憶しておくのは大変ですので、ログインはQRコードでもできるようになっています!
余談ですが、このClever、小中学校向けのサービスとなっており全米で2,200万人の子どもたちおよび教員が利用しています。そしてちょうど先月(2021年5月)、スウェーデンのKahootにより約5億ドルで買収されました。
先生と生徒のコミュニケーションおよび教材をシェアするSchoology
もう一つ、リモート学習で欠かせないアプリがSchoologyです。Schoologyは主に①先生と生徒のコミュニケーションと②教材のシェアを行うためのアプリです。子どもたちが毎日必ず開くアプリといえます。まず先生と生徒のコミュニケーションですが、例えば私の子供の場合、毎週日曜日の夜に先生から来週のリモート学習のスケジュールと宿題が送られてきました。
次に教材のシェアですが、毎日の学習に使用する教材はSchoologyのなかに科目・日付ごと格納されており、子どもたちはそこにアクセスして自習を行います。私の子どもが通う学校ではFloridaVirtual Schoolというフロリダ州が運営するオンライン学習プログラムの教材を使用しました。2000年代からオンライン学習を進めてきたフロリダ州の教材だけあってとてもわかりやすく、イラストやゲームも多く取り入れられているため子どもも飽きずに勉強できていました。
とにかく読書(リーディング)の多いアメリカの学習スタイル
最後にアメリカ(カリフォルニア州)の初等教育について感じたことについてご紹介します。それは一にも二にも「読書」という点です。先生から出される宿題には毎日必ず20分の読書が義務付けられており、年の後半、一部対面授業が再開した際にも授業中には読書の時間が毎日必ず設けられていました。また、私の子どもが受けていたESL(English as a SecondLanguage)プログラムの先生もとにかく「Read, Read, and Read!!」と読書の重要性を説いていました。そのため、オンライン学習においても読書をサポートするアプリは数多く存在します。私の子どもが使用していたのは主にKids A-ZとLexia Coreの2種類でした。Kids A-Zは物語(Story)やあるテーマに関する説明文(Informative Text)を読んでクイズに答える形式、Lexia Coreはリーディングとリスニングを行いながらクイズに答える形式で、両方とも子どもの言語レベルに合わせて教材が提供されるようになっており、進捗状況が可視化されているので保護者も自分の子どもがきちんと学習できているか把握することが可能です。
我が家は渡米してはじめての学校がオンラインだったため戸惑うこともたくさんありましたが、先生や学校の献身的なサポートと優れた学習教材のおかげで無事1年間を乗り切ることができました。そして、新型コロナパンデミックという非常事態の中でも素早くリモート学習に切り替え、学びの空白を作らなかったアメリカの教育システムの対応力の高さには非常に驚きました。もちろん、10近いアプリを使い分けて学習しなければならなかったり、子どもの質問に先生が答えるインターラクティブな学習環境には程遠かったりなどまだまだ課題はあると感じましたが、まずは与えられた環境下でトライしてみて、少しずつ修正をしていくというマインドが教育現場でもみられたことは大きな発見となりました。