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Amazonの医療サービス「Amazon Care」拡大に見る米国プライマリーケア覇権争い

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このインサイトについて、さらに詳しく動画で解説しています(12:11)

先日、Amazonは遠隔医療サービス「Amazon Care」の全米展開を発表しました。2019年に遠隔医療支援サービスを提供するスタートアップHealth Navigatorを買収し立ち上げたAmazon Careは、これまで自社の従業員を中心に本社のあるアメリカ・ワシントン州など地域を限定して提供されてきましたが、立ち上げから1年半を経ていよいよ全米展開が始まります。

COVID-19のパンデミックによりアメリカでは遠隔医療(英語ではTelehealthやTelemedicineと呼ばれます)市場は過去1年間で飛躍的な成長を遂げました。The Wall Street Journalの最近の記事によると、将来的に全体の20%から25%が遠隔医療になるという予想が出ています。また特筆すべきは患者の満足度で、ある調査によるとビデオ通話による遠隔診療を受けた患者の75%が今後も直接訪問ではなくビデオ診療を選択すると答えています。このように評価が高く利用者が急増する遠隔医療ですが、現在の提供サービスは主に以下の3領域に限定されています。

  1. 緊急診療。特に夜間・休日の診療や子供の診療(Urgent care)
  2. 慢性疾患の定期的なケア(Periodical check up and treatments)
  3. オンラインの強みが活かしやすい、またはオンラインのデメリットが小さい疾患(メンタルヘルス、性病、女性疾患、皮膚科など

アメリカでは従来から「プライマリーケア」という考え方があり、患者はどのような病状でもまずはプライマリーケアドクター(日本のかかりつけ医に相当)の診察を受けます。そのため「全ての医療の入り口」と呼ばれているのですが、この領域はまだまだ遠隔医療が浸透していません。従って今後、遠隔医療においてプライマリーケアを押さえた者が勝者となる可能性は非常に高いと考えられます。そこに今年1月、業界トップのTeladocが満を持してプライマリーケアサービス「Primary 360」の提供を開始しました。

業界最大手Teladocは2021年1月にプライマリーケアに特化した新サービスPrimary360を発表

2020年に合併したLivongo Healthのデータ取得デバイスとの組み合わせによりワンストップゲートウェイを実現

そのような状況下、Amazon Careは最初からプライマリーケアに特化したサービスとして立ち上がりました。このサービスにはこれまでの遠隔医療プラットフォーマーにはない以下の特徴があります。

  1. オンラインとオフラインを融合させた医療サービス
  2. 提携した医療機関の専任チームによる質の高い医療

多くの遠隔医療プラットフォーマーはオンラインでサービスを完結させていますが、内容によっては対面の処置が必要なことは当然あり、いかにオフラインを組み合わせるかはこの分野の最重要課題です。またAmazonは医療機関のOasis Medical GroupやCrossover Healthとの提携により品質を高く保つ努力をしています。これもプライマリーケアという重要な医療ハブを担う上では大切なポイントです。このように業界最大手、またITの巨人Amazonの積極的な動きにより、今後遠隔医療の覇権争いはプライマリーケアに舞台を移していくと予想されます。

以下、EISの考察です。

  • プライマリーケアにおける遠隔医療が普及することで、リモートでも血圧等のバイタルデータを正確に計測するニーズが高まり、関連するIoT製品の市場が拡大する。実際、1月にオールデジタルで開催されたCES2021において、同分野の展示は大きな注目を集めた。
  • 医療の世界においてもオンラインとオフラインの融合が競争のカギになる。それにより、遠隔医療プラットフォーマーと医療ネットワークの提携が加速すると予想。また、通院と遠隔医療との間で医療データの統合が必要となるため、病院やクリニックにおけるデジタルトランスフォーメーションもこれまで以上に加速していく。
  • 一方、遠隔医療の浸透は、医者などの医療従事者がギグワーカー化することによる医療の質低下リスクを内包している。今後、質の担保と他社との差別化を図るために各社による医師の囲い込み競争が起こる可能性がある。

参考記事

  1. TechCrunch
  2. Amazon Care
  3. TelaDoc
  4. photo credit: Tech Crunch, TelaDoc, Seeking Alpha, Amazon care

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