量子コンピュータ技術の実用化が近づいています。早ければ来年にも実用化ソリューションが出てくると予想されています。量子コンピュータ技術は従来のコンピュータでは処理できなかった大量のデータを圧倒的な速度で処理できます。2019年にGoogleが、スーパーコンピュータが1万年かかる計算をわずか200秒で解いたことを発表して世間的に注目を集め、一躍トレンドになりました。投資活動も活発で、2020年には投資額が前年度3倍の6億ドルを超え、2021年には8億ドルに達する見込みです。
対象領域は、シミュレーション(新薬の開発、化学物質のデザイン、気体・流体分析、金融マーケット分析、等)、最適化計算(株式ポートフォリオ最適化、保険リスク評価、ロジスティックスネットワーク最適化、道路運行ルート・飛行ルート最適化、等)、機械学習(自動運転、金融不正対策、広告最適化、等)、暗号技術(暗号化・複合化)の分野に大きな効果があると期待されています。
量子コンピュータ技術実用化の具体例
- COVID-19対応のような新薬開発を、従来より大幅に短縮された期間で開発する
- 自動運転に必須であるAIアルゴリズムのトレーニングに用いる
- ドライバーの実際の運転データと道路状況、気象情報を組み合わせて安全運転度を計算し、最適な保険料を導出する
- 配送サービスにおける複雑なピックアップルートを荷物の到着状況や配送先の顧客の状況を踏まえて瞬時に計算する
- 複数人の患者送迎のピックアップルートを瞬時に計算する
- メタバースのようなバーチャル空間においてよりリアルな顔、衣装、声でコミュニケーションをとることができる
現在のハードルはハードウェアにあり、計算結果にノイズが入り安定しないことと、ハードウェアの製造・維持が大変難しいことが上げられます。この解決にGoogle, Micsoroft、AT&T、IBM、Intelといった大手企業、D-WaveやIonQといったスタートアップが参入し、日本でもNEC、日立、富士通、東芝等がしのぎを削っています。一般にも門戸が開かれており、AmazonやMicrosoftがクラウドで量子コンピュータを利用した研究を行える環境を用意しています。
以下、EISの考察です
- 量子コンピュータ技術は破壊的技術になり得る可能性を示している。これまでの計算資源では解決できなかった課題が解決される期待値がある
- 現在のハードウェア開発競争の先には、実用化に向けた実証実験が活発になる。顧客に本当に利用されるユースケース、アプリケーションをイメージして実験した企業がビジネスをリードすることができるようになる
- 機械学習の盛り上がりとともに発生した人材競争も発生するようになる。データサイエンティストのような専門人材だけでなく、技術要素を理解して専門人材を使える企業が優位性を持つようになる
参考文献